「、、、、待ってよ。」
それに異議を申したのはアルだった。
「だって、、、フルカネッリって人、この世界でいう西暦1929年の人でしょう?今は、、、、、、。」
「えぇ。アルの言いたいことはわかるわ。でも「あの」フルカネッリよ。」
ユミはアルの知識に感心しながらそう言い切った。
「なんだよ、アル。フルカネッリって奴、知ってるのか?」
エドは自分も知らないことを弟が知っていたことにいらつきながら。
「兄さんも読んだと思うんだけど例の“大聖堂の秘密”っていう本。」
覚えてない?と首を傾げながら聞いてみる。
「あぁ、あれ。大聖堂は寺院ではなく錬金術書だとかとんでもないこと書いていた、、、。」
「あれの作者だよ。」
アルはほらっと言うようにエドに言った。
それでエドも気がついた。作者が生きていた年代のことを。
「何より、驚いたのがその人、弟子の前に二回ほど現れたんだけど一回目は別れた時のままの姿だった。
二回目はかえって若返ってたように見えたってその弟子が著書で残してるんだよ。」
「だから彼は今でも噂を残している、、、」
アルが一気にフルカネッリと弟子の話をしているとユミがふっと話だした。
「賢者の石を持っている、と。」
座敷は朝餉に向かってますます騒がしくなった。
そんな喧騒の中でここにいる三人だけは世界から切り離されたようだった。
2004/2/19脱稿
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