「ところでさー、どうやってそんな練成方法を身につけたの?」

アルが不思議そうにに聞いた。

「あ?師匠に教わったんだよ。」

は二人を引き連れながらアルの質問に答えた。だがエドはその答えに納得しなかった。

「はぁ?そんなことあるのか?普通は力の循環をすぐに習うんじゃないのか?」

「うーん。ぼくたちの師匠はまずは力の発現に重きを置いてたから。

それにぼく、力の循環云々を習う前に師匠がいなくなっちゃったからさ」

は頬を掻きながら言う。

「へ?の師匠ってウィルさんじゃないの?」

「違うよ、アル。確かに今のぼくの師匠はだけど本当の師匠はもう一人いるんだ。」

兄弟は怪訝な顔をした。丁度そう、が言い終わった時に玄関に到着したため会話は一旦途切れた。

 

 

「すっげー、、、、、」

「ほんとに車、、、なの?」

二人は目の前にある大きな金属の塊を見て感嘆の言葉を吐いた。

「めずらしいの?」

は首を傾げながら二人に聞いた後、にやっと笑うとエンジンキーについたスイッチを押した。

すると二人の目の前にあったドアが自動で開いた。

「「うわっ」」

二人は驚いて飛びのいた。

「ふっふっふ。今時、そんなんで驚いてくれる人なんていないよ」

と満足げには言うと二人に中に乗るように示した。

そして自分は運転席に乗り込んだ。

「ドア閉めて。それから一応、シートベルト締めといてね」

は二人にそう指示を出しながらエンジンキーを差し込む。

そしてブレーキを踏みながらサイドブレーキをはずす。

「これでいいのか?」

エドが聞いてきたのでは二人の乗る後ろの席を覗き込んだ。

「そうそう。んじゃ、出発進行ー!」

「『ハローエンジョイドライビング。目的地はどこですか』」

ヴンという音が鳴ったと思うと運転席近くにつけられていたモニターがついた。そして機械的な音声が響く。

「『特になし。』」

はその今しがたついたばかりのナビゲーションシステムにそう命令した。

そう命令するとモニターは現在位置を示したまま静かになった。

エルリック兄弟は目を丸くしてそのと機械のやり取りを見ていた。

「ねぇ、。」

アルが驚いた様子でに話し掛ける。

「この車には僕たちしか乗ってないよね?」

「それから声が聞こえたような気がしたんだけど、、、」

とエドがモニターを指差して聞く。

「あぁ、カーナビって言うんだ。珍しい、、、よね。その顔じゃあ」

は鏡越しに見た二人の顔に苦笑しながら言った。

「機械、、、なのか?」

エドは目を見開きながらまだ問うてくる。

「うん。これはね衛星から発せられる電波をキャッチして今現在この車がどこにあるのかがわかる装置なんだ。」

はできるだけ言葉を選びながら二人に説明した。

どこからどこまで二人は知っているか、どこから二人が知らないかはまったく知らなかったためだ。

「へーじゃあ、自動的に自分たちがどこにいるか示してくれる地図みたいなもの?」

アルが小首を傾げながら聞いてきた。

「うん。そうだよ」

はそんなアルの動作をかわいいなぁと思い目を細めながら見ていた。

「すげーな、、、」

エドはモニターをじっと見詰めながらぽつりと言った。

 

「なぁ、さっきの話の続き、聞いてもいいか?」

エドが運転するに聞いた。

「あぁ、さっきのね。はね、ぼくの兄弟子なんだよ。」

「兄弟子?」

「そう、ぼくより早く師匠に弟子入りして免許皆伝を言い渡されたんだ。」

「じゃあ、実際にはとウィルさんは同じ師匠に弟子入りしたんだ」

「へー、んでその師匠は?」

エドは何気なく聞いたがは顔を歪めた。エドは鏡に反射されたその顔を見て不審に思った。

「失踪したんだ。急に。いや、急でもなかったのかもしれない。には何か言ってたみたいだし。ぼくにも手紙を残してたから。

きっとかなり前から予定してたことなんだと思うけど。」

「へー」

はそのお師匠さんのこと心配してるんだね」

アルは小首を傾けながら言った。

「どうして?」

エドがびっくりしてアルを見た。

「だってお師匠さんの話してる時、寂しそうな顔をしたんだもん」

そうだよねとアルはに問うた。

「アルは良い観察眼を持ってるね。」

は鏡越しに微笑みながらそれだけを言った。

 

 

「ぼくはまだ最初の修行しか見てもらってないんだ。だから練成陣は持ってない。」

二人はそのの言葉に目を瞬かせた。

「練成陣を持ってないって?」

「ぼくらの門徒では師匠から力に見合った練成陣を作成してもらうんだ。

それから修行を見てもらって最後に自分の練成陣を創る。

ぼくは師匠に練成陣さえ作ってもらう暇さえなかったんだ。」

目を細めは緩やかなカーブを曲がるためにハンドルを切る。

「それよりも力の御し方を覚えなさいって言われてね、、、。あのさっきの方法を習ったんだ。

でも本当はあまりやっちゃいけないらしいね。師匠はともかくはとても嫌な顔をする。」

太陽が隠れたのか車の中がさらに暗くなる。

「心配してくれてるのはわかるんだけどね。やっぱりね。師匠とぼくの唯一の絆みたいなものだから。」

二人は後部座席に乗っていたのでの表情を窺い知ることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/12/29脱稿 

  

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