「ここでは錬金術は既に滅んでいる。」
のその言葉に二人は目を見開いた。
「どういう意味ですか?それは」
アルフォンスが口を開いた。
「どうもこうも、言葉そのまま。」
「だってお前らも錬金術師なんだろ?」
エドワードがを問い詰めるように聞いた。
「そう、僕は錬金術師さ。」
「じゃあ滅んでなんか」
「、、、、そうだな、どこから説明すればいいだろう?」
急には額に手を当てて考え始めた。
「人の退化かな?一番しっくりくる。」
「退化???」
エドワードが繰り返す。
「そう、これは僕のこれまでの研究で考えついたことだ。まず物質を練成するっていうのは自分の中に流れているエネルギーで物質を分解する。
そしてそのエネルギーでまた再構築する。」
「そんなこと知ってるさ!」
エドワードは噛み付いた。
「そう、これは誰だって知ってる。錬金術師なら。でもそれができる人と出来ない人がいる。つまり、ここまでくれば予想できるかもしれないがここでは出来ない人が圧倒的に多い。昔はそうでもなかったらしいが」
はそこで溜息をついた。
「錬金術は万人に受け入れられる学問ではない。」
「つまり、錬金術なんてもう学問なんて見なされてないんだよ。」
ここで三人は急に他の声を聞いた。
「ただいま。」
だった。
「つーか錬金術っていったらオカルトの三本柱の1本に数えられるようなもんだと思われてるし。それより何より練成なんか外でしてみろ。変人だぞ?捕獲されてモルモットよろしく実験につかわれちゃうぞ?あぁそれとも解剖?やだなぁ」
はそう言いながら台所へ消えていった。
残された三人は思った。『今までのあの重苦しい雰囲気の苦労はどこに!?』
そしてはもっと別なことも考えていた。『俺の出番が!!!それより俺のあの説明の努力は!!!!!』
「そういえばアルフォンス、その服似合ってるね。より似合ってると思うよ。」
台所から声が響いた。
「さぁ、今日は純和風だぞ!久しぶりだねお刺身さん」
テーブルに食事が出されたのはそれからまもなくであった。
「、、、、すんごく速かったね?」
未だショックを受けているが聞いた。
「あ?車でばびゅーんと町のスーパーまで。」
「あっそう、、、。車?車なんてあったっけ?」
「、ぼくよくは知らないけど老人ホームはまだその年齢では入れないよ?それとも精神科の病院?」
は真剣な顔をしてに問い掛けた。
「ほら、この前、買ったじゃん。ぼくを脚君にするために」
「あぁ、そうだったっけ?」
既にの心はここに在らず。目の前の白い山と生魚に心は注がれている。
「二人とも、そこに座ってね。一応箸出しといたけど使えないだろうからフォークとスプーンも出しといたから」
そういうとは手をぱちんと合わせた。
「『いただきます!』」
「『いただきます、、、、??』」
アルフォンスはみようみまねでの真似をした。
エドワードは既に食べ始めていた。
「ほれ、、食え!」
はうきゃきゃきゃきゃと笑いながらをはやしたてながら食べ始めた。
「ねぇ、、、さん」
アルフォンスが目の前にある皿を見ながら聞いた。
「あ?でいいよ?それでなんでしょう?」
「これは、、、、生、では?」
アルフォンスが刺身に指を指して言った。
「そのとおり!これが世界で有名な日本での新鮮な魚の食べ方であります!この醤油につけて食べるんだよ」
といい、黒い液体の入った小さな小皿を指差した。
「へぇ、、、、」
アルフォンスは少し引きながらまた生の魚の切り身を見た。そして兄であるエドワードを見た。
「あー!兄さん!!ちょっと服に醤油がついてるよ!」
「へ?あっほんとだ。ちゃー。でもアル、これ結構いけるぞ。一応食える。」
「一応って何さ?一応って。でも嬉しいなーそう言ってもらえて。結構外国人ってその刺身、嫌がるんだよねー」
そういいながらの目は明らかにのことを見ていた。その目は明らかに笑っている。
「なんだよ?その目」
「なーんでもあーりませーん!」
の睨みを変なイントネーションでは避けた。
「エドワード、上着貸して?醤油はすぐに落とさないと染みになるからね。水につけてくるよ」
はそういうとエドワードから上着を引っ手繰って廊下に出て行った。
が出て行くのと同時に動き出したのはだった。
「ウィル?」
エドワードは不信に思ってを問い掛けた。
「二人ともこのことは何卒ご内密に。」
そういうとは茶碗を持つとさささっと消えた。そして戻ってくるとその手にはカラになった茶碗とパンが握られていた。
そして急いでパンを頬張るはなんとも痛ましく二人には見えたという。
「エドワード、上着そのまま洗うから。あれ?、ごはんは?」
は目ざとくの茶碗の中身が無くなっている事に気づいた。
「、、、、、おかわりする?」
はしばらくの沈黙の後ににこやかにそう言い放った。
エルリック兄弟はここにの完全敗北を見た。
ちなみにここで話は終わるがエルリック兄弟はなんなくこの和食の試練を越えることが出来たことをここに書いておく。
エドワードは色々な所への放浪の経験とそして今まで何年の間も味覚を感じたことのなかったアルフォンスにとっては特に苦になるものではなかった。
2003/12/9脱稿
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