「さて、。今日の晩御飯は何にするか?」
は食堂まで来ると落ち込んでいるに話を振った。
「『一応、米が研いであるよ。』」
意気消沈しながらは答えた。は先ほどの話を聞いて落ち込んでいた。
また自分が原因で大変なことをしてしまったということが解ったからだ。
それもこれから自分の身に不幸が訪れる前触れと思われるようなことをしてしまったと聞きかなり落ち込んでいた。
「『また?』」
がいかにも嫌そうな顔をした。
「『ぼくは日本人です。お米は日本人の心!』」
は先ほどからの落ち込みはどこへやら、拳を振り上げた。
「オコメって何ですか?」
アルフォンスが聞いた。の心底嫌そうな顔を見て興味を覚えたらしい。
「ライスだよ。ライス」
は訳した。実はここまでの話、彼らは英語で話をしていた。
はもちろんも英語でエルリック兄弟に話し掛けていた。
それは彼らがいかにも日本人には見えなかったからだ。たしかに金髪の日本人は増えた。それに金髪だからって日本語がわからないとは限らない。しかし念のために現在の国際語である英語で話し掛けていたのである。
先ほどのとの会話は日本語で為されていた。そのためエルリック兄弟には意味がわからなかった。
しかし目ざといアルフォンスはがオコメという単語を聞いて顔をしかめたのに気がついたので聞いてみたのだ。
「ライスってあの東洋で主食の?」
とエドワードも話しに加わってきた。
「あぁ、そう。あの変なつぶつぶの」
は憎い相手の話をしているような顔をした。
「『なんだよ!米のどこが悪いんだ!、お前半分は日本人だろ?何故そこまで米を嫌う!!』」
は拳を振り振りしながら日本語で喚いた。
「はなんて言ってるんだ?」
エドワードは不思議そうな顔で聞いた。彼からしてみれば始めて聞く言語だった。
「気にしなくていいよ。それにしてもやっぱりわからないんだ、日本語?」
はを無視して話を振った。
「「日本語?」」
エドワードとアルフォンスの二人は顔を見合わせる。
「そう、日本語。やっぱり二人は大陸系?」
「ちょっとー無視んないでよーー」
は日本語で割り込んできた。
「大陸?」
アルフォンスは首を傾げて単語を繰り返した。
「ここは東洋の島国、『ニッポン』だよ?」
はえっへんと胸を張るようにアルフォンスにわかるように言った。
「「にっぽんーーー???」」
エドワードとアルフォンスは叫んだ。
「へー、もしかしてとは思ったけど」
はまじまじと二人を見た。
「ならやっぱり今日は日本食だね」
にっこりとそれはそれはきれいに笑った。エルリック兄弟はその笑みを見てある人物を思い出したとか。
「『えー。それはいけないよ!二人は今日初めて知らない土地にやってきたんだよ?やっぱりここは、、、』」
「『刺身だな。それからお味噌汁にー』」
二人を慮っているようで本当は自分のために日本食を否定しようとはがんばったがはすでに聞いていない。
ちなみに既にここでエルリック兄弟の存在はかすんでしまっている。
「二人とも期待してて!日本はいい国だよ」
はそういうと本当にさっきまで落ち込んでいたのが嘘のよう目をきらきらと輝かせ、すっくと立ち上がった。
「!ぼくこれから買出しに行ってくるよ!!実は今日は米しか用意してないんだよね。帰ってこないと思ってたし。そういえばどうして今日帰ってきたの?しばらく帰らないって言ってたくせに。彼女に振られた?それともとうとう大学、首になった?」
「『、、、、それ以上言ったらどうなるか解っていってるよな?』」
はこめかみに血管を浮かび上がらせながら日本語で言った。
「うへ?ごっめーん。ビンゴ?」
うけけけと笑いながらは二人にもわかるように英語で言う。
「!!!」
「『きゃーーー!さま、ご乱心ーーー!!!』いってきまーす!!」
が拳を振り上げるとは頭に手を乗せて二人にはわからない言葉を発しながら駆けていった。
「ったく、遊びやがって。二人ともごめんな、今日はきっと日本という国が嫌いになる日だ。せっかく初めての国なのに」
は急にくたびれた顔になって二人に謝った。
「、、、、そんなに酷いんですか?日本食って?」
アルフォンスはおどおどと聞いた。
「いや、食い慣れていないとね、、、。」
ちなみに僕は未だに食い慣れないよ、、、とごちながらは苦笑いをした。
「ところで歓迎会だから、その服はあれだね。えーとアルフォンス君?僕の服貸すよ。のパジャマだろうけどそれじゃつんつるてんだろ?」
たしかにがアルフォンスに着せた自身のパジャマは彼にとっては少々小さかった。足の踝が見えている。
「も僕の服を貸してあげればいいものを」
そう言いつつは二人をつれて自分の部屋へ向かった。
余談だが彼がに対してプライバシー保護約束条例を結ばせたためは彼の部屋に入れなかったことをここに注記しておく。
は自分の部屋に二人を招きいれた。
「これなんてどうかな?」
そう言って白いワイシャツと紺色のジーパンを取り出した。
「うーん、、、。こいつの方がいいか?」
次はティーシャツと白い長ズボン。
「いやいや、これだね!」
出されたのは黒の皮パンツとまたまた黒いタンクトップだった。
「その上にこれ着たら、、、、エドワードとおそろいだ!」
「俺の目に狂いはなかった!俺ってセンスいーね!それにアルフォンス君って着こなしがかっこいいよ。」
は自分のセンスの良さに酔いながらアルフォンスを見た。
「そうですか?」
とアルフォンスは照れて頬を掻いた。
「あっでもエドワードと同じだからなんか益々エドワードの小ささが浮き彫りに」
「むぎゃーーー!!!」
エドワードは獣と化した。
その様子をおもしろそうに笑っている。
「兄さん、遊ばれてるよ、、、、。」
三人は先ほどの部屋に戻り、紅茶を飲みながらを待つ間、話をすることにした。
「あぁ、そういえば二人とも日本語ができないだよね?じゃあって呼びにくければウィルって呼んでくれる?」
「ウィル?」
今まで黙っていたエドワードが口を開いた。
「そう、ほらミドルネームのウィリアムからウィル。日本人以外の友達にはそう呼ばれてるんだ。」
「わかった。ところでウィルも錬金術師なのか?」
エドワードは今まで気になっていたことを聞いた。先ほどの工房での調査などを見ていて気になっていた。
「あぁ、僕も一応錬金術師だよ。うん一応。」
「一応?」
アルフォンスが聞いた。
「そう。本職は違うってこと。僕は現在は大学の特別講師?みたいなことをやってるよ。それに僕は錬金術師としてはミドルクラスさ。」
「大学?」
今度はエドワードだ。
「そう大学。」
「すみません、大学ってなんですか?」
先ほどのエドワードの疑問の言葉にが気づかなかったようなのでアルフォンスがエドワードの代弁をした。
「へ?大学は大学だよ。」
三人は顔を見合わせた。
「大学っていうのは語源からすると勉学に関係するものか?」
エドワードが眉間に皺を寄せながら聞いた。
「、、、、、、もしかして二人のいた所では大学ってなかったの?」
「、、、、はい」
アルフォンスのその返事には驚いた顔をした。
「本当に?うそぉ?」
「本当だ」
エドワードがぶすっとしながら言った。
「へー、そうなんだ。じゃあこう言えばわかるかな?えーと高等教育、専門教育をする学校のことだよ。あと研究機関なんかも含まれるかな?」
「研究機関?」
「そう、今はあまり個人で研究はしないからね。そういう団体に所属して研究するんだ。それに団体の方が国に助成金とかせしめやすいし」
「へー。国から?」
「そう。やっぱり一人の力じゃねぁ、どうしようもないことがいっぱいあるだろ?」
「国家錬金術師制度みたい」
アルフォンスはポツリと言った。
「国家?錬金術師??お前らのところはそんな奴もいるのか?」
はその言葉に興味を引かれたのか聞いてきた。
「あぁ。国家錬金術師っていうのは大総統府直属の機関でそれになると高額な研究費と国の保有する特殊文献の閲覧、各種国家施設の利用ができるんだ。そのかわり国の要請があると駆り出されるけどな」
「、、、、君らの世界と僕らの世界はパラレルワールドか何かかもな。」
は急にあごに手をあて考えて言った。
「「???」」
二人は怪訝な顔をした。
「ちなみにその話からすると錬金術は結構ポピュラーな学問だったりするわけ?」
「あ、あぁ」
エドワードはの真剣な顔に押されながら聞いた。
「君らみたいに練成できる人が結構いるの?」
「、、、練成陣を描けば。」
アルフォンスが答える。
「、、、、、二人とも。この家から一歩でも外で出た場合、錬金術はしてはいけない。」
は真剣な顔をしてそう宣告した。
「は?」
「へ?」
二人はまさかそんなことを言われるとは思いもしなかったので変な声をあげた。
「どういう意味だよ?それ」
エドワードは不満げに聞いた。
「どういう意味ってそのままさ」
は眉間に皺を寄せながら語った。
「ここでは錬金術は既に滅んでいる。」
2003/12/9脱稿
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