「しょうがないから見せてあげよう。僕らの工房を。」
は立ち上がってエルリック兄弟を見下ろしながら言った。
「そのかわり、目隠しはしてもらうよ。これぐらいは了承してもらわないと」
「転ばないように気をつけてね。」
そう言っては目隠しをしたエドワードの腕を引っ張った。
アルフォンスはがついている。
エドワードはもう方向感覚を失っていた。
ぐるぐる回っているような気がしないでもないし、真っ直ぐ歩いたと思うと曲がるし。
「ウィール!これって師弟お約束条項に違反してないー?」
「しょうがないだろ、。」
「ぼくは守ったよー。なんかくれー!」
「守ったうちに入るか、ぼけ。それならこの部屋に入らせないようにしろ。」
そんな会話を聞いているうちに急に止まってエドワードはにぶつかった。
「ごめん」
エドワードの発した言葉を以外に思いながらは言った。
「さて工房についたよ。目隠しとっても構わないよ。」
エドワードが目隠しをはずした。そして目の前に広がったのは緑色と眩しい光だった。
真中が吹き抜けになっていて中には庭があった。ガラス張りになっていたので庭がよく見える。
庭には螺旋階段があり、そこからのぼって二階に行くらしい。そして細い木が1本生えている。
「、それでどこだ?二人が出てきたのは」
「あそこだよ。ほら1階の机があるところ」
そう言ってとはどんどん進んでいく。エドワードは後ろを振り返って驚いた。
自分たちが入って来たと思われる扉なりなんなりがあると思われたその場所には何もなかったためだ。
しいてあるとすればそれはレンガの壁だった。
「ここか。、、、って何、床に書いてるの!」
「いや、警察の真似。でもこうしとけばわかりやすいでしょ?」
にこっとは華やかに笑った。
そこにはまるで殺人事件が起こり、死体がどういう風に倒れていたかを記憶しておくために書かれたような人の形をした線画があった。
ちなみにご丁寧に体の中には「チビ」「デカ、裸」とあらゆる言語で書かれている、、、。
、、、、お疲れだったんですね。さん。こんなことをして遊ぶしかないほど。
「これなんて書いてあるんですか?」
アルフォンスが自分のだろうと思われる線画を指差して聞いた。
「うん?デカと裸という身体的特徴が書いてあるよ。色んな言語で。あぁ、ちなみにそっちは」
アルフォンスは慌ててを止めようとした。そしてアルフォンスは見た。がにやりと笑ったのを。
「チビってだけ書いてあるよ」
自分の線画を見ていたエドワードがピクッと動いた。次の瞬間。
「ちびっていうなーー!」
叫んでいた。
「あははーエドワードくんは面白いですねー」
そしては思う。あぁ師匠、新しいおもちゃを手に入れたんですね、、、と。
、、、、だがチビって書いたのはあなたではピーーーー(怪電波受信中)
「それでなにか、わかりましたか?ししょーにエルリック兄弟?」
は聞いた。完全に自分は蚊帳の外だった。専門用語が飛び散る会話に入れるほど熟達しているわけではないし。
それでも三人の話が一段落したところで思い切って聞いてみたのだ。
「あぁ、それがね。全然わからないんだ」
「は?」
「ここにくればなんか術の痕跡が残っているかと思ったんだけど」
アルフォンスが困惑顔で言った。
「ほかになんかなかった?」
「ほんとにさっき話したことぐらいしか、、、それにぼくだって術の痕跡を感じるぐらいはできるさ。
その時は全然感じなかったよ、、、多分」
「多分ってなんだよ、多分って」
エドワードが突っ込む。
「いやぁ、疲れてたし」
は頭を掻く。
その時、はっとしてが机の下を調べ始めた。
はそのの行動を見てびくっと肩を揺らした。
「、、、、、、、ない、、、、」
あぁ、そうだ、まだ言ってないことがあった。だが今更言っても遅いだろうな、とは後悔した。
「、ちょっとここへ来てくれるかな」
「何でしょう?師匠」
震えないように。あの世に行く時は毅然とした態度で行きたいものだ。
「ここ、わかる?」
「、、、、、」
が指差す三角形の傷。は黙ってみていた。
「ふう、、、君だったんだ、、、」
そう言うとは机の下から這い出た。
「、出したものはどこ?」
「、、、、、ここに」
は一昨日出した例の試験管をポケットから取り出した。
「「賢者の石?!」」
エルリック兄弟が叫んだ。
「嘘!これ賢者の石だったの?!」
「そう、賢者の石だ。まぎれもなく。封印されてるけどね。」
そう言うとは溜息をついた。
「どうして、、、、出しちゃったの?」
が悲しそうな苦しそうな顔をしてに問うた。
「いや、その、、、師匠が、なんか隠してるな、、、と思って。その、」
そんなの顔を見たことのなかったはしどろもどろな答えだった。
「!」
「ごめんなさい!」
は叩かれると思って身を堅くした。だが予期していたことは起こらなかった。
は優しくを抱きしめていた。泣きながら。
「これから、大変だぞ、、、お前」
「えっと、その、?」
はそう言うとを離した。
は眉間に皺を寄せ何がなんだかわからないという顔をした。
は涙を拭くと話し出した。
「これでなんとなく一つにまとまった。が賢者の石の第一封印を解いたことによる衝撃とエルリック兄弟が行った練成の衝撃とでこことエルリック兄弟が練成していた場所と空間が一時的に繋がったんだ」
「待ってよ。ぼく、ただあの練成陣にちょっと細工しただけだよ。それで空間を捻じ曲げることなんか」
「、あれは賢者の石を隠すために特別に先達様が施した陣だ。本当は簡単に解けるはずのない。」
はを見据えて言った。は絶句し寒気がした。
「唯一の救いはが第一封印しか解かなかったってことだけだな、、、、」
はそう言うとエルリック兄弟に目を向けた。
「すまない。君らを巻き込んでしまって」
「、、、いや、オレたちにも賢者の石を制御し切れなかった責任がある。」
「ひとまず君たちの面倒は僕が責任を持つ。君たちが戻れるよう僕が出来るかぎりの協力をする。」
「「ありがとうございます。」」
エドワードとアルフォンスが同時に言った。
「、、、君たちは双子かい?息がぴったりだ。」
が笑いながら言った。
エドワードとアルフォンスはお互い顔を見合わせて笑った。
「ほら、いつまでもぼーとしてないで。今日は二人の歓迎会だ。、、、帰ろう」
そうは言うとの手を握り締めた。
石の隠者 出会編終了
2003/11/21脱稿
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