マヨヒガ、それは日本の東北地方にある伝承にでてくる地名だ。
しかしだれもそこがどこにあるのかは知らない。
なぜならば一度入ったマヨヒガを抜けてしまえばそこへは戻れないからだ。
入った時はマヨヒガだとは気づかずに、出てきて振り返った時初めて知るからだ。
だからマヨヒガで出会った人もまた、二度と遭えない人。
『お兄ちゃんたち、山男?』
と名乗った幼子がおずおずと聞いた。
『山男?』
アルが答える。
『ぼくのこと、、、食べちゃうの?』
「へ?」
これにはエドもアルも口をあんぐり開けさせられた。
『た、食べちゃうんだーーーー!!!』
そう言うとはしくしくと泣き始めた。
『誰もを食べたりしないよ。ちょっと驚いただけ』
アルがをなだめるように近寄る。
だがぱっとは後ろに飛びのいた。
『じゃ、じゃあどうするの?ぼく、おとうさんのところにもどるの?
それとも、、、親がいないからさらいにきたの?』
真剣に心配そうには聞いてきた。
『には親がいないのか?』
ここで初めてエドが口を開いた。
『ぼくはね、おかあさん、いないの。おとうさんはいるけどおとうさんはぼくをきらってるの。
だからぼくはここにきたの。でもここでは親無しだっていわれてる。
それで親無しはひとさらいにあってうられちゃうって、、、、、、』
そう一気に言うとまたは黙った。
「、、、、、、、、」
エドとアルはお互いの顔を見合わせた。
間違いなくこの子はだと二人は理解した。
の母親の話はだいぶ前に聞いたし父親とは不和だと聞いていた。
『なぁ、。』
エドが唐突に聞いた。
『おとうさんも、おかあさんも、ともだちもだれもいないんだ、、、。』
ぽつりと囁かれた言葉。
『おとうさんはぼくがなんでおんなのこじゃないんだっておこってぶつの。
だからぼくはここに連れてこられたけどここでもともだちもいない。
ぼく、うまれてきちゃだめだったの?』
まるでためていたことを吹き出すようには涙でうるんだ目でエドたちを見ていた。
2004/2/19脱稿
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