「ちっくしょー、、、あーもうなんであの時じゃんけんしちゃったんだろーなー自分」

薄暗い中、一人の子供がものをがさごそと移動させていた。

いや子供ではない。彼は青年と呼んでいい年齢であった。しかし容貌が彼を子どもと形容させるようなものだった。

「なんでほんと、、、自分のノリのよさにはがっくりだよ」

彼は一人、この部屋の片づけを任されていた。いや正しくは押し付けられた。

 

、、、、最初はぐー、じゃんけんぽん」

つい二時間前に彼、は師匠にそう声をかけられた。おもわずはその時グーを出した。

師匠はにこにことパーを出している。

「、、、、、」

はことの次第がわからなかった。この人のことは知り合ってからかなり時間が経つが未だによくわからない。

、これから工房の片づけをお願いね」

「へ?」

唐突であった。

「じゃんけんで負けたでしょ?だから工房の片付けよろしく。僕、これから野暮用でちょっと一週間ほど出かけるから。だから家のことも頼んだよ。くれぐれも留守にする際は鍵をちゃんとかけてね。」

 

こうしては工房の片づけを一人でしなくてはならなくなってしまった。

しかも家の番まで。

『あぁ、のあの言葉はつまりぼくにこの家で寝泊りしろと言ってるんだろうな、、、1回お家に帰れるかな、、、』

「大体さ〜横暴だよな〜急にさ、人の背後に近寄ってきてさー」

グズグズグズ、、、は文句をたらしながら片付けている。こんな仕草からも子どもと形容されてしまうことを彼は気づいていない。

子ども扱いされることを一番嫌っているくせに。

 

「あぁ、レポート終わんなかったらどうしよう、、、。今度の落としたら結構痛いよな〜あーもう!」

はこういうと最後の本を本棚に入れた。

「よし!あとはこの書類だけだ、、、、はぁ」

彼の目の前の机にはかなりの書類が所狭しと、山になっていた。そりゃぁ溜息だってつきたくなる。

「、、、やっぱり分類しとかなきゃいけないんだろうか、、、」

分類をしないでそのまま封筒なりに入れといてもきっとあの師匠のこと、あの書類はどこだ?と探し始めて今日片付けたものを一時間そこらでまた片付けなければいけない状況にしてくれるだろう。それを考えるとまとめるしかない。その後の労力の方が惜しい。

「これは大学、工房、、、ふーん?なんだろ、これ、構築式だな。」

彼は師匠の書き溜めた構築式の書かれた書類を持ってどさっと床に座り込んだ。

 

外からの光は段段オレンジ色を帯び部屋も薄暗くなってきた。

「あーやべっ読み込んじゃった、暗くなってきたな、、、早くしなと、あれ?」

は机の下に小さな引っ掻き傷があるのに気づいた。それは三角形の不自然な傷。

にやり。

「はっはーん?なんか隠してんなぁ!」

そういうと彼は三角形を指でなぞって考えた。

『ここに三角形があるとすれば、、、』そう考えながら指で三角形の頂点を円で結んでいく。

『よし!』と考えながら三角形の手前で手をついた。

その時だった。

びしっと静電気が起きた。咄嗟に手を引っ込めた先には一つの密封された試験管がちょうど三角形の上に乗っかっていた。

「、、、ふふふ!まだまだだね!師匠。ていうかなめてるね」

彼はそう言いながら試験管を突っついた。熱くはない。思い切って試験管を持ってみた。

「、、、紅い石、、、?」

試験管の中には紅い石が入っていた。はそれをもっと明るいところで見ようと机の下から這い出た。

「きれーな石だな、、、」

彼はそういいながら今にも落ちそうな太陽の光にその石をすかしてみた。

「賢者の石ってこういうのかもな〜でもな〜まさかねぇ」

そんなことを言いながら彼は部屋の中心へツカツカと歩いていく。

「あーでもこれで師匠にゆすりをかけることができる〜た・の・し・み・だ。」

彼は物凄くかわいらしい笑みを浮かべていた。言っていることはかわいくないが。

試験管を部屋の中央でぎゅっと握り締めた。

 

太陽の日は落ちて部屋は暗くなった。

 

そしてそれは起こった。

「な!なんだっこれは!」

は暗くなったと思った。次の瞬間、部屋はまぶしい光にあふれていた。

「まぶしい、、、何が起こってるんだ?」

光はすぐ収束していった。は安心した。また何かやってしまったのではないかと心配したのだ。

しかし彼はその後もっと大変なことになっていることに気が付くことになる。

 

部屋には最初、彼が一人で片付けをしていた。そして光が収まった後、部屋には三人いた。

 

外はさっきまできれいな夕日が映えていたというのに急に豪雨が降り始め、稲妻が光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/11/10脱稿・アップ

 

  

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送