木漏れ日を浴びて輝いた。

 

 それは、何よりの目印で。

 

 

 

 

 

 

「エドみーっけ…」

 日当たりの良い丘で横たわって熟睡している彼に、そっと近づいていく影が一つ。気付かれないようこっそりと、影で覆わないよう太陽の位置を確認しながら。日が少し傾きかけている。太陽と向き合う方向にちょこんと座り、顔を覗き込ませその端正な顔を凝視した。

 薄く細い金髪。寝返りでも打ったのかきっちり編みこまれたみつあみが少しほつれている。そっと赤いゴムに手を掛け、髪を巻き込まない様緩く抜き取った。後残る髪をゆっくりと解いていくと、草に金が広がった。太陽に反射している。燦々と照らす陽の光を浴びながら、健やかに寝入るその姿は本人が聞いたら憤慨しそうだが可愛らしくて。

 暫くその寝顔を堪能していたのだが、眠気と言うのは伝染するようで。くあ、と欠伸をするとその隣にころんと横になった。眼に入る青が染みる。まとわりつく眠気もいやな感じではなく、むしろ心地良さを感じる。先程より更に近付いた彼の顔をじーっと見つめた後、遠慮がちにその額に口付けをした。誰も見ていないし、本人ですら眠っているのに自分の行為に赤面をして、ばふっと腕で顔を覆いそのまま瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 そうして、小さな子猫が二匹ほど惰眠を貪っている様を太陽は微笑ましく見守り。

 

 

 

 

 

 

「うわぉ…っ」

 辺りが暗い。青と黒の間のような色をしている空を開眼直後目にし、慌てて起き上がる。妙な体勢で寝ていたのか身体の節々が痛む。年寄りのような事を思ってしまった事に軽い自己嫌悪をして、頭を数回振った。降ろしてある金の髪は闇夜に染まって尚輝いている。

「やっべぇ…早く帰らねぇとアルと に怒られる…っ!」

 立ち上がろうと腰に力を入れるが立ち上がれない。妙な体勢で寝ていた所為だろうが、力なくへにゃりと倒れこんだ。両腕を広げ夜空を仰いだが、ごんっと腕に何かが当たる。「…?」

 振り返れば、そこにあったのは。

!?」

 驚きのあまり声の音量が上がる。思いのほか響き渡った自分の声に慌てて両手で口を覆うが、出てしまった声は戻らない。怒るのだろうと予想した本人がここにいるのならばちょっとは安心かな、と少しでも思ってしまった自分を否定するように首を振った。

「おい、 !風邪引くぞ」

 揺さぶっても目覚めの気配は無い。既に日が暮れたとか言うレベルじゃない時刻だろう、 がここにいてもアルフォンスは家にいるはずだ。間違いなく頭から角を出して…元々あるが更に出しているだろう。

「あー…ったくもう」

 これ以上遅くなるといくらエドワードでも冗談ですまない。仕方なくくーくー安らかな寝息を立てている の腕を肩にかけ、背中に背負った。

「ったく…後でなんか貰わねーと割にあわねー」

 ぶつぶつと文句を言うエドワードだが、肩にある からは勿論反応は無く、代わりに静まりきった闇夜に小さく響く寝息。それがなんだか妙に生々しくて、変な意識すら持ってしまう。

「第一男の目の前で無防備に寝るか、フツー?」

 顔を赤くしながら気を紛らわそうと独り言を言うが、全て人気の無い路地に吸い込まれていってしまう。結局残るのはエドワード一人の気まずさだ。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー…アル?」

 玄関の扉を開けたところで絶対に飛び出してくると思われた弟は、しかし予想に反して出てくる気配は無い。そもそもいる気配すらしないのは何故だろうか。不思議に思って を背負ったままリビングに向かうと、テーブルの上に一枚の紙。

 

 

 

  『  兄さん、

     

       帰りが遅すぎるよ!

       探しに出るので、もし帰ってきたら家を出ないでね

       お腹空いてたら一応置いてあるパンでも食べててください

       シチューもあるから、食べるならあっためてね

 

       先に寝てても良いけど


    • 明日ちゃんと事情聞かせてもらうよ! 


 

                          アルフォンス   』

       

 

 

 本当に何処までもしっかりした弟である。どちらが兄だか分からないと言う台詞は散々聞かされてきたが、これでは否定の仕様も無い。心配をかけた事に申し訳なさを感じながら、 を寝かせようと彼女の部屋へ歩いた。

 部屋のドアを開けるとそこは随分簡素な部屋。必要不可欠なもの以外は置かない主義だと普段から言い張っているだけはある。かろうじて女の子らしさを感じさせるのはカーテンやシーツ等を薄いピンクで統一している事と、机の上にある筆記用具類程度だろう。エドワードの部屋と違って物が散乱していると言う事はあまりない。

「よいしょ…」

 こてんと転がる小さな体。自分より小さいと普段からかえるのは良いけれど。

 ベッドの横にぽすんと座りこむ。電気を点けてはいないけれど、窓から侵入してくる月光が室内の見通しは保証していた。さらりと広がった髪をすくいあげ、離す。ぱさりと柔らかい音を立ててシーツに滑る。

…?」

 声をかけても何の反応も返さない。熟睡しているらしいが、あんな場所であんな格好で、かつあんな体勢でよくもここまで眠れるものだと一種の感心すら覚える。

「………」

 静まり返る屋内。アルフォンスが帰ってきた気配も無く、耳に届くのは小さな寝息と遠くに響く人の気配。

「……………」

 暗い室内。人気が無く静寂に包まれた空間で、目の前には無防備な少女。これで何も感じない男がいたら是非見てみたい、とエドワードは思う。それも現実逃避の一環なのだが、限界に近いらしい。

 まじまじと の寝顔を堪能するのも良いが、手を出してしまいそうな気がして少しだけ気が引ける。

 

「……ちょっと位なら…?」

  

 小さく呟いたはずの声が思いの他響き渡り慌てて口を両手で塞いだ。ちらりと彼女に視線を投げるが起きる気配は相変わらず無く。

 

 

 悪戯心が、湧かないかといえば。

 

 

 ぎしっと音を立ててベッドのスプリングが軋む。鼓動が早く高鳴るのが自分でも嫌と言うほど分かって、周囲に心臓の音が聞こえないか心配すると言う感覚はこう言うときを言うのだろうなと妙に冷静な判断を下す自分が何処かにいるけれど。

 

 

 そっと、瞼に唇を落として。

 

 滑るように、頬にキスを降らせた。

 

 

 

 相変わらず気持ち良さそうに眠っている を、幸せそうに眺めるエドワード。

 

 

 

 

 

 平穏な、日常の午後。

 

 

 

 やってくる夕闇も

 

 襲い掛かるかもしれない何かも

 

 

 

 

 全て

 

 この瞬間を前に

 

 

 脆く崩れる、儚さは

 

 

 

 世界の何よりも美しく

 

 

 

 

 その全ては

 

 

 

 君のためだけに

 

 

 

 






200番踏んでくださった由宇様に。

大変遅くなりまして申し訳ありません
なんだこの遅さはという…あぁ。

しかも内容がこれっていうのもな。
えっと、エド夢で特に指定が無かったのでもう好き勝手(何
こんなで宜しかったでしょうか(汗
お好きにお持ち帰りください。放置も可です(笑

それでは。
ご報告有難う御座いました!





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