まほろばの時

 

 



 今は松本先生の案内で唐子を回っている最中だ。

  これからまるで小説はここを書いたような、いや描いたと思われる場所に向かうとのことだ。楽しみである。

 私はまるで作家さんのばらまいたパズルを一つ一つ繋げていく、、、そういう作業が大好きだ。
 

 打木村冶さんが残してくれたこのおもしろいパズルが一つ繋がっているところへ行ける、、、

 そう思うと胸がドキドキする。
 

 今日は朝から曇りでとっても嫌な気分で出かけた。

 せっかく案内してもらえるのに雨なんか降られたらたまんないよ、、、なんてことを考えながら。

 だがその予感は裏切られ眩しい陽光とまるで白い雲を強調してくれるような青い空の下、私は唐子を巡ることができた。


 「ここはもともとあった道で、、、、、」

と先生が今通ってきた道の説明をしてくれている中、私は窓の外をじっと眺めていた。


 車の前を走っている子供がいた。子供はかけっこをしていたようだ。車は子供を追い抜いて行こうとする。
 

 子供は泥だらけで、、、追い抜くときに男の子だとわかった。
 

 その時だ。私は目を見張った。男の子は着物を着ていたのである。足はわらじを履いていて泥だらけ。
 

 私はその男の子と目が逢った。男の子は、にやっと笑った。
 

 その子は、、、私が想像した通りの、、、保少年だった。
 

 車は男の子を追い抜いた。私は窓から顔を出して後ろを見た。そこには何も無かった。車が通ってきた道祖神のある道が続いているだけだった。
 

 

 

 


 私たちは目的の場所にたどり着いた。


 先生が車から降りた。私も続くように車から降りた。

「ここからあっちの方を、、、」

 先生は一気に急斜面を駆け上がり指差した。私も一気に、とは行かなかったが急斜面を登り先生の指した方向を見た。

 

 

 

どこまでも広がっているようなスカイブルー。

 スカイブルーの下には遠くの秩父山脈が寝そべっている。

 その秩父山脈には白い雲の毛布がかかっている。

 青と白と深緑の色の配色。

 

 


 

 先生が小説を片手に説明してくれた。ここは第六部にでてきたところだということを、、、。保とふゆ子が見た風景だということを、、、。

 私は先生の説明にドキドキと胸踊らしながらも失礼だと思うがさっきの男の子のことを考えていた。

 男の子と目の逢ったあの瞬間から私はもう逃れられない、と思った。

 きっとこれからあの風景と男の子は私の心の中から消えることはないだろう。

 これは予感。確証も何も無いけどそんな気がする。

 

 

 

2001/9/5脱稿 2001/9/8発行

 

あとがき

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