「でね、、、って何むくれてるの?」
アルは食卓につき、今日の成果を話している最中だった。
「むくれてなんていないわ」
「えー、、、充分むくれてるじゃないか。僕、なんか気に障ることでも言った?姉さん」
あ、今日はサルマーレだ!
アルは姉によって自分の前に置かれた今日の夕ご飯をみて歓声をあげた。
サルマーレはルーマニアの家庭料理で母さんの得意料理だった。
僕はこれが大好きで、母さんが死んでからは姉さんがよく作ってくれる。
「姉さん、教えてよ!」
むー、、、。
あぁ、眉間に皺が。僕は姉さんのそんな顔は見たくない。
怒られるか小言を言われるか、何かしらが降りかかってくる。
「だって、、、」
ぼそり。
「何々?」
僕は身を乗り出して姉さんの言葉を聞こうとした。
だって珍しく姉さんが小さな声で話すものだから。
いつもならはきはきと答えるのに、、、。
気になるじゃないか。
「だって、、、何?」
僕は促すように言葉をつなぐ。
姉さんは眉間に皺を寄せ。唇をつんっと尖らせると言った。
「そんなに身を乗り出したら服が汚れるよ。誰が洗うと思っているの?」
僕はテーブルに突っ張っていた腕がかくんっと力が抜けそうになった。
危ない、危ない。本当に服を汚すところだった。
「だって、姉さんがはっきり言ってくれないんだもの。聞こえるように近づいただけじゃないか」
僕はそれでも言い訳を言う。
「それよりも!教えて」
小首を傾げて姉さんに問う。
僕は知っている。姉さんは僕のこのしぐさに弱いって。
僕もいい加減、大きくなったのに姉さんにはこのしぐさをする僕が可愛く見えるらしい。
姉馬鹿もここまでくれば立派だ。少し呆れてしまう。
だけどこのしぐさをした時に、姉さんの浮かべるなんとも言えない表情は実はとても可愛くて、、、。
ついつい、年齢を忘れてやってしまうのだ。
今もその表情を浮かべている。
これは多分、僕だけの特権だ。
姉さんは諦めた様子でため息を一つついた。
やった!陥落した!
姉さんのため息は僕にとっては神の息吹。
僕の願いが姉さんに聞き入れられる合図だ。
みんなはため息すると幸せが〜とか言ってるけど僕にとっては嬉しい瞬間だ。

「だってね、、、」
僕はうん、とうなづいてみせる。
「まるで、その、、、エドワード、、、さんだったよね?」
「エドワードさんがどうかしたの?」
姉とエドワードさんは逢ったことはないはずだ。
ちなみにエドワードさんとはついこの間、僕が師事しているオーベルト先生のところにやってきた人だ。
彼はオーベルトさんの文通相手だったそうで本格的にロケットについて研究すべくワイマール共和国のミュンヘンからわざわざやってきたのだ。
だがその年齢を聞いて僕は驚いた。
なんと僕より一つだけしか上ではないのだ。
それよりも驚いたのが彼の、、、。
いや、これは禁句だ。彼はとてもそれを気にしている。
ついこの間もそのことを言ってのされたやつを見た。
(彼がのした相手はどう考えても彼が倒せるような相手ではなかった。このことの方が僕としては驚きだ。)
そんな彼は現在目下僕の目標だったりする。
彼の理論は面白く、また驚きに満ちたものだった。
僕は姉の口からエドワードさんの名前が出ただけでもちょっとわくわくした。
そういえば、今日はエドワードさん、、、。
「えぇ、そのエドワードさん。」
思わず、今日のエドワードさんの語ったエンジン出力についての話をしそうになった僕だが姉さんはそんな僕にきづかなかったようでため息混じりに言葉を出した。
「姉さんはエドワードさんに会ったことなかったよね?」
何故、ここでエドワードさんのことがでてくるのだろう。
僕が小首を傾げつつ姉さんの動向をうかがった。
姉はなんだか憂いを含んだ顔つきだ。
、、、なんで姉さんはエドワードさんのことをそんな顔で呼んでいるんだ?!
「なんだか、、、アル、とってもエドワードさんに懐いているみたいだから」
アル、取られちゃったみたいでなんだか悔しいわ。
姉さんは少しだけ頬を染めて真剣な目をして僕に語った。
僕はぼーぜんとなった。
「え、何、姉さんエドワードさんに、、、」
「そうよ、嫉妬したの!もう、子どもっぽいでしょ?」
そういうとせかせかと台所に戻ってしまった。
もう、食卓には準備はすべて整っているというのに。
多分、今の姉さんは顔が真っ赤でかわいいんだろうなぁ、、、なんて思いつつ。
「いただきまーす」
僕は間延びした挨拶をして食事を始めた。
今日のサルマーレはなんだか一段とおいしく感じたのは僕の錯覚だろうか?











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