傍若無人な君と

 

彼女はいつもそうだ。だれから構わず人を使いぱしりにする。

そしてオレのことも使い走りにする。

、、、、時々はオレのこと、考えてくれたっていいんじゃない?

 

 

「エド、ちょっとここまでお使いに行ってきて欲しいんだけど」

そういうと彼女はオレに大きな地図を前にして言った。

「、、、、なんでまた」

そんなところに。

「ここでなんか不穏な動きをしている団体様がいるからちょっと見てきて欲しいんだ」

彼女が示したのはここから一週間はかかるであろう、リンドンの街。

「ちゃんと金、渡すから。アルと一緒に潜入調査してきて。」

「オレはお前の部下でも従業員でもなんでもないけど、、、。」

そんなこと言ったって彼女の答えはわかってる。

「私の言ったことになんか文句でもある?」

笑顔で言われた。

 

 

「兄さんてさ、さんに勝てないよね、、、。」

「そんなこと言うけど弟よ、お前はあいつに勝てるのか?」

「勝てないね」

オレはアルと二人で歩きながら話をしていた。

さんに勝てる人っているのかな」

アルはそう言うと空を見上げる。

「なんていうかあの顔で言われるとはいとしか言えなくなるんだよね」

どす黒い何かをまとっているようなあの笑顔。

絶対こいつはやるという確信した笑顔。

「なんで、兄さん、あの人のこと好きなの?」

「わからん。自分でもさっぱり。」

「兄さん、、、。」

うなだれるアルフォンス。

そう、エドワード・エルリック生まれて最大の謎。

とエドは恋人関係なのだ。

晴れて恋人関係になったのはアルフォンスが肉の体を持ってから。

負い目がなくなったエドはすぐに告白したりした。

にっこりと彼女は微笑んだ。

「私とあなた、つりあうと思って?」

 

「最初、あんなこと言われたに、、、」

アルフォンスは不憫そうに兄を見て溜息をつく。

「それより、何より僕らの命、狙ってきた人だよ?」

彼女は彼ら兄弟の命を狙ったことさえあるのだ。

結局、彼女の雇い主をエドたちがさっさと潰したがために殺されはしなかったが。

それでもエドの右手のオートメイルは大破させられてしまった。

「、、、、謎だな。」

「謎だね。」

ふーと兄弟は溜息をつくと歩き出す。目指すは彼女の事務所。

 

 

「はい、これが潜入調査の資金。資料はこれ。」

は無造作に厚手の封筒と紙の束をテーブルに放り投げた。

エドは資料をぺらぺらと見る。それからアルに資料を渡した。

その間には給湯室に行く。

「潜入調査期間はそんな長くなくていいから。」

そう言いながらはコーヒーを二人にだす。

「そりゃあ、その内容だからな。解っちまえばさっさと帰ってきていいんだろ」

エドは不機嫌そうに言った。

「そりゃあもう。早く帰ってきてもらわないと。」

はそう言うと自分のコーヒーに口をつける。

「何?オレがいなくてさびしい?」

エドは顔をニヤつかせながら言う。

「従業員がいないと困る。」

「オレはお前のなんなんだ!」

「ちゃんと金払ってるだろ?アル」

はアルに向かっていう。

「いや、さん、聞いてるのは兄さん」

アルは控えめに突っ込んでみる。

「エドにも給料やるっていってるがいつもいらんと突っ返してくる。」

「だーかーら!恋人から給料もらうなんてかっこ悪いことできるか!」

論点がずれていく。

「、、、エド、もう一度言っておくがもっと若くていい娘がいるだろう?」

は溜息をつきながらコーヒーをすする。

!」

エドの顔が一気の赤くなる。

「兄さん、やめなよ」

くいくいと立ち上がっている兄のコートを引っ張る。

さんもあまり兄さんで遊ばないで」

アルが咎めるようにを見つめる。

「今回の潜入調査の報酬は残った資金の全部だから。」

はその後何もしゃべらなかった。

 

 

「ほら、兄さんいらいらしなで。」

「いらいらなんかしてない!」

の事務所からの帰り道。

さん、恋人ってことに関しては否定しなかったんだから。」

「だからだ!」

エドはますます機嫌が悪くなる。

「だからますます嫌なんだよ。」

「どうして?」

アルは首を傾げながら問う。

「あいつはオレからあいつを振らせようとする!くそ!」

そういうとエドはまた足を怒らせながら早歩きで歩いていく。

 

結局、次の日エドたちはに言われた通りに潜入調査に行くために汽車に乗ろうとしていた。

そこでエドは思いもしない人に出会った。だった。

「よう」

は片手をあげるとエドたちにそう声をかけた。

さん!」

アルは驚きの声をあげる。今まで潜入調査やら、派遣やらあったが今日始めて見送りにやってきたのだ。

「そんなに驚きかい?アル」

はそれを自覚しているのだろう、肩をすくめ苦笑いしながら言った。

エドは昨日のことがあり、を睨んでいる。

「ちょっと兄さん、借りていい?」

アルはコクリと頷くと荷物を持って汽車に乗り込んだ。

残されたのはエドと

「何しにきたんだよ」

エドがくぐもった声で問うた。

「見送りに」

そっけなくは答えた。

「オレの?」

「そう」

それだけなのにエドは胸がどきどきしてくるのを感じた。

あぁ、こんなことだけで期待する自分が悲しい。

「、、、、、」

「一応、昨日のことを謝ろうかと、ね」

エドはその言葉に顔を上げた。目の前にはが眉間に皺を寄せながら苦笑いしている。

「かなり怒ってたみたいだから。ごめん」

、、、。」

「私は、これぐらいしか君を繋ぎ止めることはできないんだ。

恋人とかそう言うんじゃなくて本当にこれぐらいしか」

!」

「何?」

はびっくりしてエドの顔をまじまじと見つめる。また、怒らせた。

は何も解ってない!なのにあやまんな!」

「エド。」

「オレはが好きなんだ」

「エド、私とエドはいくつ離れてると思ってる?」

は顔を背けながら言った。

「年なんて関係ねぇだろ!」

エドはを乱暴に抱きしめた。

は思った。いつからこんなに彼は大きくなったのだろうと。最初にあった時はまだ少年だった。

今もまだ少年といっていい年だ。それでも彼は少なくとも自分と同じくらいの身長になっていた。

「エド?」

抱きしめられながらは問う。

「私と初めてあった時のこと覚えてる?私、あなたの腕壊したのよ?」

「覚えてるに決まってるだろ」

「だったら、普通恐れるなり恨むなり他の感情を持つんじゃないの?」

疑問。

「オレだってわかんねぇよ。いつのまにかのこと好きになってたんだから」

「、、、そんなの信じられる?」

「信じろよ。」

「私は、、、、、。」

「オレはを愛してる。」

「私はエドのこと好きだ。恋人と言ってくれるのも本当は嬉しい。でも信じられない。エドのことが。」

「じゃあ、どうすれば信じてくれる?オレのこと」

「、、、ひとまず私より身長が高くなったら」

!!!」

エドは涙を滝のように流す。何故この場面でそんなことを言うのかこの女は。

自分ひとり真剣に話していたのではないかと思うと顔が熱くなってくる。

「嘘だよ。そんなに簡単に信じられたら面倒はないよ。」

彼女は言いながら寂しげに笑った。

「こうなったらオレが無理にでも信じさせてやる!」

そう言うとエドはを一旦自分から解放した。その次の瞬間エドはにキスをした。

エドとキスをするのは初めてというわけではない。

しかしまさかエドが公衆の面前でするとは思わなかったのでは驚き目を見開いた。

「どーだ!」

真っ赤な顔をしてどーだと言われても。それでもかなりの照れ屋で恥ずかしがり屋な彼の精一杯の反撃と言える。

「ふう、わかったよ。できるだけ信じてみるように努力します。」

!」

エドは目を見開いて嬉しそうに笑った。

「と、言うわけでさっさと仕事して来い。」

は笑顔で汽車を指差し、命令した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドナドナドーナード〜ナ〜売られていーくーよー」

「兄さん、、、」

「ドナドナドーナード〜ナ〜」

首を走る汽車の窓から出して涙を流している少年が一人。それを慰める少年が一人。

彼らの仕事はこれから始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/11/23脱稿

うわーなんかいつも思うんだけどタイトル付け難い作品ばかり書くよね、、、自分よ。

それかタイトルとかけ離れたもの、書いちゃうんだよなー。今回もなんとなくかけ離れてきちゃって。

しかも最後エド売られて行っちゃったよ、、、。どういうオチだ。

やっぱり私はドリームに甘さを求めてないのか。求めないのか?

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