「うげぇ、、、、、」
「何??」
アルは小首を傾げながらなんともいえない顔をしているに声をかけた。
「、、、、、、、、、、、、」
の視線はあらぬ方向へ彷徨う。
「、、、、」
の隣ではエドは平然として食事を摂っている。
そう、平然と。
「、、、、」
また、は自分の手元をみた。
目の前にあるのはボール型のお皿。
中身は、、、、、、、。












オートミール














、何も言うな。食え」
エドはそう言った。
「、、、、、」
は涙目になってしまっている。
「、、、」
視線だけで語っている。
『こんなの人が食べるもんじゃない!!!』
と。
「ダメだ。食え」
エドはそんなに一瞥もくれずにもくもくと自分のノルマをこなしていく。
「、、、エドぉ、、、、」
にっこり。
「ダメだ。オレはそれは食えない」
それ、、、。
アルフォンスがのために、そうのために作ったオートミール。
牛乳のオートミール。
「でもでも!これ、めちゃくちゃ」
「めちゃくちゃ?」
エドの耳だけに聞こえるように小声で言ってたのにいつのまにか真後ろにアルフォンス。
、、、まさか僕のオートミール、食べれないって、、、」
「滅相もありません!」
あぁ、般若のアルフォンスさん、、、。









今日の食事当番はアルフォンスだった。
アルフォンス、彼は5年間、食事を摂ることができない体だった。
どんな体かといえば鎧である。
そんなこと、言われても実際鎧姿のアルフォンスの姿を見ていない者にはピンとこないであろう。
実際、もピンとこない。
こないけど、多分、それは真実なのだろうと考えてる。
なぜなら彼らがここにいる、その原因はその鎧だったからだ。
彼らは禁忌を犯したことにより兄エドワードは左足を、弟アルフォンスは体全部を失った。
リバウンドだ。
しかし兄エドワードは自分の右手を代価にアルフォンスの魂を近くにあった鎧に定着させたというのだ。
確かに錬金術の基本である魂、精神、体という三つの要素を考えればそれもできないことでもないだろう。
兄弟は賢者の石を用いてアルフォンスの体を練成したそうだ。
その時、賢者の石のエネルギーを制御しきれず、たまたま賢者の石の封印を解いてしまったの目の前に現われた。
偶然に、偶然が重なって彼らはの目の前にいて。
その偶然の火付け役である人体錬成がなかったとは考えられない。
なによりも兄弟の語ったときの目は真実を語っていた。





と。
ここまで逃避してみたが。
は追い詰められている。
「、、、、、」
目の前にある、白い、まるでミルク粥。
しかし、実態はそんなかわいいものではない。
「〜〜〜〜〜〜」
冷や汗が出てくる。
アルフォンスの料理はエドワードのそれと比べればとてもおいしい。
エドワードの料理もの師匠であると比べればとってもおいしい。
しかし、、、、、。
なぜに、、、。
これだけ。
「お、オートミール!」
そこに現われたのは今も出ていたである。
「僕にもちょーだい!」
そう言うとのオートミールは皿ごとの手に。
そしてオートミールはパクリっとの口に入った。
は目を見張った。
あぁ、とアルの全面戦争。
は怖い。しかしアルも怖い。
二人して腹黒いから尚更怖い。
「、、、」
あぁ、沈黙が、沈黙が痛い。
今日は帰ろう。あの寂しい一人暮らしの部屋に。
エドには申し訳ないがダメだ。この二人の喧嘩なんて怖すぎて一緒の空間にいたくない。
、、、エドもつれて帰っちゃおうかな、ついでにちびたちも。
そうだ、それがいい、、、。
しばらくこの家に寄り付かないでいれば、、、。
このままどっかに旅行と洒落こんでもいい。
はつかのま、現実逃避。
「、、、うまーい!」
だからこの声は聞こえてなかった。
「マジ?!」
エドワードは驚いたように聞いた。
「うまいよー」
ぱくぱく。
はオートミールをスプーンにすくっては己の口に入れる。
「、、、オレでさえついて」
いけない味なのに、、、と続けようとしたがアルフォンスがじっと己を見つめているのに気づいて口をつぐむ。
「いやいやいや、こりゃ『おふくろ』の味だよー」
は何か、懐かしそうに目を細めながら言った。
「『おふくろ』?」
アルフォンスは聞き覚えの無い日本語に首を傾げながら聞き返した。
「そう、『おふくろ』。マザーだよ。お母さん」
そう言いつつ残りのオートミールを口にかきいれた。
だからエルリック兄弟が珍しくシーンとしていることに気づかなかった。
この兄弟はとにかく騒がしい。
何か本などに集中しているときでなければかなりうるさい。
なのに、今は動きも止め、何もかも表情さえも止めていた。
「エド、アル?」
それに気づいたのはやっと現実逃避から帰ってきただった。
あぁ!とうとうアルが怒ったのか!?とビクビクしながらは聞いた。
「、、、、いや、、、、」
エドワードが声を振り絞る。
「うん、なんでもないよ」
あれ?は首を傾げる。
アルフォンスは怒った様子はない。
「、、、何?二人とも絶対何もないって感じじゃないよ???」
は自分がちょっと思考の波に乗っている間に何が起こったのかときょろきょろとあたりを見渡すと空になったオートミールの皿と満足そうなの姿。
、、、?」
「あぁ、満足。あんなおいしいオートミール、久しぶりだよ」
「えぇえ!!!」
の一言に叫んだ。
「え、あれ、お、、、お、、、」
「おいしかったよ?」
がどもっていた言葉をさらっと言う
「いやー、久々『おふくろ』の味を思い出したよ」
僕の母さんもオートミールはミルク派で。それですごく甘くしてくれたよ。
は感傷深げにどこか、ここではない遠くを見つめているような顔をして言った。
「エドとアルのお母さんってめちゃくちゃ料理のうまくて優しい母さんだったんだろうね」
はそう言うとエドとアルの頭を撫でた。
いつもなら二人とも子ども扱いしないでーとかなんとかで逃げてしまうのが今日は珍しく逃げない。
この時、やっとも二人の様子がいつもと違うことに気がついた。
「ん?どうした?」
は二人を覗きこむ。
「あぁ。オレたちの母さんはすごく優しかった。」
「料理も上手だった」
エドワードの顔には慈愛に満ちた、しかし陰りのある笑顔。
アルフォンスは眉間に皺を寄せて、まるで泣きそうな笑顔だった。
「オレがどうしてもミルクで作ったオートミールが食べれないでいたら代わりに水で、砂糖を少なめで作ってくれた」
「僕にはいつも甘いミルクのオートミールを作ってくれた。」
は二人がまるで泣いてしまうのではないかと気が気でなかった。
そしては気づいていた。二人が語る言葉はすべて過去形であることに。
彼らのお母さんは、、、既に、、、。
「よかったね。母さんから譲り受けることができて。」
はそういうとアルのなおいっそう、力を込めて撫で付けた。
「うん!兄さん、僕、覚えてた、母さんの味、覚えてた!」




















感動的な場面。
しかしその中に入れずに。
一人、ぽつんと、取り残されていた。



















彼だけ。



母親が。



いない。































2005/8/8脱稿  by夢見由宇

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