「これから1週間、ぼくにかまってくれるな。」

鬼気迫る顔ではそういうとオレらのもとから去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、あれ?」

オレは心底不思議に思い、問いかけるでもなく声に出した。

「あぁ、もうそんな時期なんだ、、、。」

ウィルが新聞を広げ顔を出さないまま呟いた。

「、、、時期?」

アルもエプロン姿でウィルの言葉を繰り返す。

(どうでもいいが、ここに来てからエプロンがえらく似合うようになったな、アル)

(、、、、兄さんこそ人のこと言えないでしょ!兄さんが家事のできる人だとは思わなかったよ!)

(、、、、、、、、何おう!!!)

(とにかく話の腰、折らないで続けて!!!)

「あぁ、、、、一応あんなでも学校行ってるだろ?」

「あぁ、ダイガクだっけな?」

オレが少し思い出しながらそう言うとそうそう、とウィルは頷いた。

「その大学っていうのでね、大きなイベントがあるんだよ。」

「へー、、、どんなイベントなんですか?」

アルはイベントと聞き興味を抱いたようだ。どうもアルはこの国(世界)の習慣が面白く感じかれるようで色々調べているらしい。

あいつが錬金術以外に研究する姿は見ていて新鮮だ。

そういうオレも、こちらの世界の学術にはすごく興味を抱いているのだが。

「あー、これはきっとアルの興味の範疇外だと思うけど、、、」

それでも聞く?と声に出さずにウィルはアルに促す。

それにアルはキラキラと目を輝かせている。その様子ですでにわかるがアルはとても聞きたがっているようだ。

それをまた、ウィルは勿体つけるように片目をつぶりながらアルを見ている。

、、、、、、、なんだかむかつく。

「勿体つけてないで話せよ!」

オレは短気だからすぐに答えが欲しい。それにそんなに勿体つけられるとものすごく気になる。

「あれー?エドも聞きたかったの?」

あらーエドワードくんも聞きたかったのー?

「お前が勿体つけるからだろ!早く話せ!!!」

パンッ!!!

「、、、、、、、わかったから、その腕を収めてくれると僕はうれしーなー」

にこやかにウィルは言った。ちなみにオレの腕とは機械鎧・オートメイルの方で。もっと詳しく言えばその腕は刃物になっている。

だが言葉とは裏腹にウィルは全然怖がっている風ではない。どちらかというと楽しんでいる。

、、、、、、、、この態度が気にくわねぇ、、、。

だがやっとウィルは話す気になったらしく、オレが腕を離すとしゃべり始めた。

「この時期はね。大学にとっては一大イベントがあるんだよ。」

「ダイガクにとって?」

アルが目を丸くして聞き入っている。

「そう。大学の存亡をかけた戦いとも言える。」

ウィルが深刻そうな顔で目を伏せた。アルは目を見張った様子だがオレは騙されないぞ。

絶対、ウィルはそんなに深刻には考えてない。

「大学にとっては死活問題でもある、受験者をどれだけ募ることが出来るか、その受験者にどれだけ自分の大学がいい所かアピールする機会なんだよ」

ウィルは眉間に皺を寄せながらそういい終わると一つため息をついた。

「それにそのイベントでは各学部の研究結果なんかも発表されてどれだけ自分たちが努力しているかアピールする場でもあるんだ。」

そう言うとウィルは冷えたコーヒーを啜った。

「そしてそのアピールがうまくいかないと、、、、、、」

「うまくいかないと、、、どうなるんですか?」

ウィルが言葉を一旦切って、ためるとアルが待ちきれないのか次の言葉を急かす。

「、、、、、予算が減らされるのだよ」

「へ?」

オレはそこで変な声を出してしまった。予算?

「エド、何間抜けな声をだしてるの?というより何間抜けな顔をしてるの?」

ウィルが顔を上げ、オレの顔を見て心底おかしな奴という顔で見ている。

「いや、、、予算て、、、」

オレが先ほど聞こえた言葉を繰り返すとウィルは握りこぶしを作って言いのけた。

「いいかい?世の中金!金がなきゃ研究なんてできないでしょ!

そして僕やは大学に行っている以上、大学から予算を貰って研究をしてるんだ!!!

確かには学生かもしれないけど学部の予算が減るイコール学部縮小、結果が全然でなけりゃ廃止されてしまうのだよ!」

そう言うとウィルは演技がましく涙を拭いてみせた。、、、泣いてないけど。

「しかもの通っている大学の、、、いやの所属している学部はとっても弱小でね。いつもいつもは苦労しているのだよ」

ヨヨヨヨヨ。袖で涙を拭く仕種を続ける。

「もともと、が通っている大学は理数の得意な学校じゃないからね。とても肩身がせまいんだよ。」

だから躍起なわけ。

この言葉は演技なしで淡々と述べた。

「へー、、、じゃあ、、大変なんだね。」

「実際、大変どころじゃないんだけどね。」

アルが気の毒そうに言うとウィルは追い討ちをかけるかのような言葉を発した。

「、、、そりゃもう、寝る間も惜しんで学園祭を成功させようと必死さ。だからこの時期、は使い物にならないね」

始まったら始まったで鬼のようだし、終わったら終わったでゾンビ、、、生きる屍と言ってもいいような感じになっちゃうからね。

それをまるで遠くに花畑でも見えるかの如くに微笑ましく笑みを浮かべて話すウィル。

、、、、、、、、お前、のこと心配じゃないのかよ。

っつーか絶対の不幸、楽しんでるだろ???

「、、、あれ?でも学園祭ってお祭りのことなの?」

アルが祭という単語に反応して聞いた。オレも気になった。ウィルがいう通りだったら研究発表とか学会とかそういうイメージを思い浮かべるが。

「あー、、、要はね、大学の宣伝と生徒たちによる模擬店とか他にも自分たちが普段やっているサークルの活動を発表するためのどんちゃん騒ぎのことだよ」

「最初からそー言えよ!」

オレは思わず突っ込んだ。

アルもその言葉を聞き、みもふたもない、、、というか呆れてますという顔になっている。

だが、奴は何故か突っ込みもしない。ここに来てからアルは妙に静かになった気がする。

(あぁ、でもオレに対しては盛大に駄目ダシを叩きつけてくれるのが、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その説明を受けてからの様子と言えば、、、、。

本当にどんどん生気というかなんというか、、、何かが磨り減ってきているのは目に見えるようだ。

近頃では大学に近いからと言って自分の家にも帰らず、ウィルの家つまりオレたちが居候しているこの家に泊まりこんでいる。

時には大学から帰ってこないことさえある(一体はどこで寝泊りをしているのだろう、、、)。

本当にこのままで大丈夫なのか?とアルとオレは危ぶんでいるがウィルはにこやかに笑っているだけだし当のに至っては何も言わない。

が何も言わない以上、オレたちが何かを言うわけにもいかない。

きっと学園祭というのは男の意地がかかっているに違いないから。

そうでもなきゃ、があそこまでやつれていて何も文句の一つも言わないはずはない。

なんたってはお子様だからな!

 

 

 

 

 

 

 

それから数日たって。

唐突にウィルがオレたちを居間に呼びつけた。

オレはオレでウィルの図書館(室ではなく館である。それほどウィルの蔵書は多かったし何よりこの本置き場は離れにあった)でいつもながら読書を、アルはアルで何を思ったのか今朝から料理を作っている。

「これからの大学の学園祭に行くので用意しろ。猶予は十分。はじめ。」

そしてこれまた唐突にパンッと手のひらを叩いたのだった。

どうやら今日がの学園祭当日だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足だが。

このウィルの合図と共に、オレは自分の用意ではなくアルに引きずられてキッチンに連行された。

、、、、、、、どうやらアルは最初からこのことがあることを知っていたらしくへの差し入れを作っていたらしい。

、、、、、、、、、、、、、オレだけのけ者かよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004/10/1脱稿

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