これはある日の夜中の出来事。

 

「うーん、、、。」

寝返りを打つ。

「うーん、、、。」

また寝返りを打つ。そうしたらぐーっという音が聞こえた。

「、、、おなか、すいた、、、。」

そういうと小エドは隣に寝ている小アルを起こさないように心がけながら寝床から這い出た。

そして彼は暗い中、台所へ向かって歩き出した。

 

「うー、、、なんでこんなにおなかってすぐにすくんだ?」

と独り言を言いながら小エドは足元を照らすために用意したお気に入りのお手製ランプを持って歩いていた。

そのランプはからもらった材料で自分で練成したはじめての実用品だった。

が夜、一人でも用を足しに行けるようにとランプを作ろうと言ったのだ。

なぜなら彼は電気を一人でつけることが出来なかったためだ。

だからと言っていつもいつもエドやアルを起こすわけにもいかない。

それは小アルはともかく小エドのその身に宿すには大きすぎるプライドが許さなかった。

でもはいつもこの家にいるわけではない。にはの家がある。

ならそこに小エルリック兄弟を連れて行けばいいのだが何分、彼らは一般の人々に見られてはいけない存在だった。

の家はアパートに一人暮らし。隣近所が密接なところだ。

そこから小エルリック兄弟を連れ出したり連れ帰ったりするのを誰にも見られないようにするにのはとても困難だった。

一人ならそれも可能だろうがこの兄弟は仲がよかったのもあり、あまり離したりするのをはかわいそうに思ったのだ。

だから、必要だろうと思ったが材料を用意し練成をしようをした。

その時ちょうど小エドたちも居合わせていてその話を聞き、自分の力で練成したのだ。

だからのその思いやりと自分の力の結晶であるこのランプは彼の誇りであり自慢だった。

 

そんなランプを持って彼はずんずんと台所へ向かっていく。

そして自分たち用の椅子を引きずってきて、エドたちが使っている椅子によじ登り、

そしてまた、そこからテーブルへとよじ登った。

テーブルには彼の予想通り、パンの入ったバスケットが置いてあった。

小エドはバスケットに入っているパンを一つ持ち上げるとそこからぴょんぴょんと飛び降りた。

そして自分の体には大きなパンを片手に抱えて、空いたもう一つの手でランプを持つと、とことこと移動を始めた。

台所でだと何時誰が来るかわからない。そのための移動だ。

行き先は彼のお気に入りの場所。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよーございまーす!」

大きな声を出しながらは勝手に家にあがりこんできた。

勝手にと書いたが、彼はこの家の合鍵を持っている。そのために早朝でもあがりこむことができたのだ。

今日は一日、大学関係の用事がないので錬金術について修行ができると意気込んで朝っぱらからやって来たのだ。

「、、、、あ、おはよー」

ちゃんと着替えているアルがを迎えた。

「アル、おはよー。エドはやっぱり」

「うん。いつも通り。」

既にあきらめの境地なのかアルは目を閉じて思わず溜息をついた。

「んじゃ、今日はぼくが起こしてきてあげようか?」

にやりとあまり品のよくない笑みを浮かべながらは聞く。

「、、、お手柔らかにお願いします。」

そこで決して断らない自分を兄はきっと恨むだろうなと考えながらアルはそう答えた。

 

 

「ふっふっふ!今日のエドくんの寝顔はどんなかな〜?そしてどんな起こし方してやろうかな〜?」

とるんるんと言っている。きっと今日は朝からエドの目覚めを悪い思いをするに違いない。

そしてはエドの部屋の前に辿り着くとそうっと扉を開けた。

だが、そこには期待した状況は存在していなかった。

「ちびエドー!ちびエド!どこだー?」

「にいさーん!兄さん!!」

エドは寝巻きのまま、自分のベットの下やら机の下やらを探している。それにベットの上のシーツは無残にも剥ぎ取られている。

そして小アルもちょこちょこと動き回りながら部屋中を探し回っている。

少しだけ残念な思いと二人の行動に呆気に取られながらはしばらく扉の隙間から様子を伺っていた。

そして小アルがの視線に気づいた。

ー!兄さんが!兄さんが!!」

小アルは涙目になりながら走ってきた。

「どうしたの?ちびアル?」

もう走ってくる最中に涙が溢れてきたのか泣いている小アルを抱き上げて聞いた。

「兄さんが〜」

それから言葉にならずにの胸に顔を押し付ける。

「エド?どうしたの?それにしても今日は早いね。」

はそう言いながら目の前に彼に聞いた。

「それどころじゃないんだ、!ちびエドが消えた!!」

「はぁ?」

は変な声をあげた。

「今日はオレの部屋でこいつら寝てたんだけど、起きたら居なくなってたんだ。」

エドは早口でそう言った。

「それで?」

は顔を横に傾けながら聞いた。

「それでってもしかしたら猫かなんかが夜中に忍び込んできてちびエドのこと咥えて持って行っちまったかもしれないだろ!」

お前、心配じゃないのか!とエドは叫ぶ。

こんな取り乱したエドって始めて見るかもな〜とのんびりと考えながらは言う。

「ちびエドのランプはあったの?ちびエドの好きな所探した?例えば工房の庭園とか」

はそう言うと小エドたちの寝床の近くを見た。そこにはランプが一つしかない。

それを見遣るとは手を小アルの頭を撫でるように置いて歩き出した。

「おっおい!どこに行くんだよ!」

そういうとエドは寝巻きの上に上着を着るとに着いてきた。

は黙々とある場所に向かって歩いていく。

「、、、、、図書館、、、?」

とエドは不信げに聞いた。

はそんなエドを無視して扉を引いた。そして図書室の角っこにあたる場所がある暗がりに進んだ。

「エド、いたよ。」

は振り返り笑顔で小さな声でそう言うと、こちらに来いという合図でひょいひょいと手を振る。

「ほんとか?」

とエドはの背中越しに見た。

そこには本を開いてその本の上に眠り込んでいる小エドの姿がそこにあった。

「、、、、また、やったんだ、、、。」

は苦笑を浮かべながらエドにささやいた。

「また?」

エドは怪訝そうにを見ながら問うた。

「そう、また。この前はちびアルも一緒だったよね?」

そういうと腕の中にいた小アルが赤くなりながら顔を縦にコクリと振った。

「、、、、。しかもパン食べてたな。」

はそう言ってしゃがみこむと床に落ちていたパンの耳を拾い上げた。

「もう、エドのこういうところばっかり似ちゃって、、、。」

そういうとは盛大な溜息をついた。

「なんだよ。その溜息は、、、。」

むかりとした顔でエドはを見る。

「ん、きっとエドの感じたままだよ。」

「んだとー!!」

急にエドが声を大きくする。その瞬間はエドの口に自分の人差し指をあてた。

「しー!ちびエド起きちゃうだろ?」

そういうと小アルをエドに預けて小エドをは抱き上げた。

「さて、ちびアル。この本昨日ちびエド読んでた?」

最後の方のページまで開かれている本を指差しては聞いた。

「ううん。昨日はそれ読んでなかったよ。」

小アルがかわいらしく横に首をふるふるするのをみてありがとうと言うのと同時にどっと疲れた顔をして小エドを支えていない手でこめかみを押さえた。

「じゃあ、ちびエドはこれを最初から読んでたんだろうからまだ眠って間もないだろうな。エド、今日はまだちびエド寝かせてて?」

は頼むよとエドを見上げた。

「わーったよ。そんな目で見るな」

「わーい」

ちびエドを起こさない程度に喚声をあげ歩き出した。

エドもそれに続く。

 

 

「ところでちびアルなら気づいたんじゃないの?前に一度二人で抜け出して図書室行ってたことあったろ?」

は小エドをちびたちの寝床に入れて朝食をとりに台所へ行く途中に聞いた。

小アルは今の肩の上にいる。

「うん。でもね。ぼくが起きた時、もうエドが騒いでたんだ。兄さんがいないって。それでもしかしたら猫かなんかに連れていかれたかもってエドが心配してたからついぼくもそう思っちゃったんだ」

小アルは恥ずかしそうにそう言った。

でもそれよりも恥ずかしくしていたのは話の当人である。

「なっ誰もそんな騒いでなんかいないぞ!」

エドはずかずかと先に進んでいってしまう。そんな態度から本当に心配していたのだとわかってしまうことを彼は知っているのだろうか。

はそんなエドを見て可愛いなぁと思いつつ幸せを感じていた。

 

今日も青い空が広がりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/12/15脱稿

小人話を増やそうぜ第一弾。

なんとなく小人はプチシリーズになっています。このシリーズの最初である「我らがホムンクルスに〜」を読み返して思いつきました。

何故ちびエドがちびアルよりも身長が小さいのかに焦点をあててみようと。

そしてエドもちびエドのことを気に入っているということを伝えたかったのです。

きっと彼のことなので身内に何かあったらどうしようもなく慌てふためき騒ぐことでしょう。

これでもう少しが現れるのが遅かったらきっとアルもウィルをも巻き込んで捜索隊を結成して捜索し始めたことでしょう。

 

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