ー」

「何ーちびエドー」

とろけそうな顔では自分の名を呼んだものに声を返した。

「ばかエドがー」

ひくひくと涙を流しながらやってくるのを見るとまたやったらしい。

「、、、またいじめられたの?エドに」

「うわーん」

やれやれとは泣いているエドを指で撫でた。

「もう、どうして君たちはそう、仲が悪いんだろうね」

そういうとエドを自分の手で包み込み抱き上げた。

「だって〜エドが豆って〜!」

「、、、、しょうがないじゃないか。君は小さいんだから」

まで小さいっていったー!」

そう言うと彼はの胸をポカポカと叩いた。

はぁ、と溜息をつくと彼は、は思った。どうしてこうなってしまったんだろうと。

彼の腕の中には今、身長30センチメートルのエドワードがいる。

 

 

 

 

我らがホムンクルスに愛を

 

 

 

 

 

 

彼はの修行課題として制作されたホムンクルス。人工小人である。

は作るのを嫌がったがどうしてもこの術を覚えないとがだめだというのである。

実際、も一人作っており今は良き相棒として錬金術の研究の助手を勤めている。

が言うには小人と的確な関係が結ぶことが出来ればこれほどいい相棒はないと言う。

それにはその小人に何度も命を救われていた。

これから石の隠者にならなければいけないにはどうしても小人を一人つけておきたいというのがの本心だ。

それもはよくわかっていたので無下にできなかった。

しかしは問題を抱えていた。ホムンクルスを作るには人間の精液が必要なのである。

本来ならも男の端くれ、自分のものを使えばいいのだが彼は今だ経験がなかった。

その年齢で経験がないというのは病気ではないかと心配されるがいかんせん、彼の出生のことを考えれば遅れることもよくある話だ。

しかし、はそのことを失念していた。

今更そんなに言い出すのも恥ずかしいと考えたはエドワードたちに相談した。

エドワードたちは自分より年下だという気軽さもあったのだろうと思われる。

すると驚くことに彼らは快くドナーを申し出てくれた。

そしては彼らの精液を用いて小人を作成することになった。

試験管に入れられた精液を見ながらは何を考えたのだろう。

未だ意識も何もなかった頃の己の姿を見たのだろうか。

それとも、、、、、、、。

 

そしては二人の小人を創りあげた。

はそれぞれ、小アルフォンス、小エドワードと名づけた。通称はちびアルとちびエドだ。

ちびアルはアルと仲がいい。よく二人でほのぼのと中庭で日向ぼっこしながら本を読んだりしているのが目撃されている。

しかし、もう一組の方はというとこの話の冒頭に戻るのである。

何かというとけんかをしている。

 

 

 

「君たちは兄弟以上の繋がりがあるのにねぇ、、、」

「あんなのオレのドナーだとも思いたくない!」

ちびエドはぷーとふくれながらの頭の上に乗っている。

「どうしてさ?エドはいい奴だよ?なんたって君のドナーだもん」

「むーなんでいつもはエドの事ばかり加勢するんだよ!それにオレはがドナーの方が数倍良かった!」

ちびエドはの頭から今度は右の肩に移動して座った。

「だっては優しいし、頭いいし、何より料理がうまい!」

まるで自分のことのようにちびエドに自慢されては照れた。

「なーそんなことないよ。エドの方が頭はいいし、料理ならアルの方が筋がいい。」

左手で自分の頭を掻きながらは言う。

「それにぼくは優しくなんかないよ。優しさでいったら君たちのドナーたちの方が数十倍、数百倍あるね。」

「なんでさー?!」

ちびエドはますますふくれた。自分が出したものがすべて覆されたのが気に入らないらしい。

「君たちを創ったのだって自分のエゴだ、、、。」

は影を含んだ自嘲的な笑みを浮かべた。

「、、、、、、、はオレのこと嫌いなの?」

「何言ってるのさ?急に」

はびっくりして肩に乗っているちびエドをみた。

ちびエドはぽんっと飛び降りた。

はオレたちのこと創ったの後悔してるの?!」

ちびエドは叫んだ。その小さい体からどうやってそんな大きな声が出るのか不思議でならなかった。

「オレは、のこと好きなのに何で見てくれないんだよ!」

そういうとちびエドはばっと逃げていった。

「ちびエド!どこに行くんだ!!」

呼ぶのも虚しくちびエドは既に消えていた。

 

「ちくしょ、ちくしょ、、、」

ぐすぐすと泣いて走っていたら小エドは急に足が宙に浮いた。

「うわっな、なんだ!」

「まだ泣いてるのか?ちびエド」

それは紛れもない小エドのドナー、エドワード・エルリックその人が小エドをつまみ上げていたのだった。

「さっきはごめんな、そんなに泣くほどだったのか?豆って言ったのが?」

エドは首を傾げながら聞いた。

「豆っていうな!」

小エドは涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で怒った。

「、、、、、、きたねえな、、、顔洗いに行くぞ」

そう言うとエドは小エドをつまんでぶら下げたまま洗面所に向かった。

 

「よし、これで見える顔になった。ところでどーしたんだ?いつもならの所に行って慰めてもらってるだろ?」

という単語に反応してまた小エドが泣き始めた。

「、、、なんで泣くんだよ。」

「エドのばかぁ、、、思い出したじゃねぇかよ!、、、は、はオレのこと嫌いなんだよ!」

そう一気にいうと小エドはわーんとまた泣き出した。

「はぁ?がお前のことが嫌いだって?そんな訳ないだろうが。」

呆れたとばかりエドは肩をすくめる。

「だっていつも、オレ、のこと好きなのにエドのことばかり加勢するし、、それにオレのこと創ったの後悔してるんだ、、、」

「はぁ?」

エドは首を傾げた。小エドがが好きなのは知っている。というかこの小アルも含めてこのちびどもはを溺愛している。それはもう恥ずかしいぐらいに。

だがエドばかり加勢する、、、とは一体どういう意味だろうか。

しかし今はそれよりも最後の言葉の方が気になった。

がお前らを創ったのを後悔している、、、?」

そんな訳はないとエドは思う。とちびたちはそれは仲良さそうにしているし。

「どうしてそう思うんだ?ちびエド」

「だってオレらを創ったのは自分のエゴだとか言ってなんか変な顔するし」

それを聞いてエドは合点がいった。はホムンクルスを創るのをぎりぎりまで渋っていた。

それはの出生とかなり類似していた。

きっとはちびたちと自分を重ね合わせたのだろう。

は父親のエゴで生まれてきて悲しい思いをした。

それをちびたちに自分も強いたのだと考えたのだろうと想像がつく。

まったく、は何も理解していない。

ちびたちがそんなことを感じていないことを。それよりもを慕っていることを。

まだぐずぐず言っている小エドを洗面所にあったタオルで包んでエドは歩き始めた。

「ばかえど、、、どこ行くんだよ」

「ばか言うな。これからお前のお馬鹿な母さんの所につれていってやる」

涙声の小エドにそう言うとエドはきっと工房にいるだろうの所目指して歩き始めた。

 

 

!いるか?」

「エド?どうしたの?今日は工房じゃなくて図書室に行くはずじゃなかったの?」

は今朝エドが今日は図書室に行くと言っていたのを思い出して聞いた。

「うん、図書室にいたさ。でも面白いのがいたから捕獲して持ってきた」

「オレは動物か何かか?」

「あっちびエド、どこ行ってたのさ。急に走ってちゃうから心配したんだよ?」

エドの手にあったタオルからひょこりと顔を出した小エドがと顔をあわせた。

しかし、すぐに顔をタオルの潜らせる。

「、、、、、ぼく何か悪いことでもした?」

今度はエドに顔を向けて問う。

「あぁ、したね。こいつが傷つくことを。だからこいつの父親として文句を言いに来た」

「はぁ、、、。」

小エドは何事が起きたのかとエドを見上げる。

「こいつはお前のことが好きで好きでたまらない。それは知ってるな?」

「あぁ、さっき言われた。」

は頷く。

「それでお前は?」

「ぼく?好きに決まってるじゃないか。なんたって何百時間も見守って育ててきたんだから」

「そうだよな、好きじゃなきゃできないよな。なのに、お前はこいつの好きに答えてやらなかった」

「、、、、どういう意味?」

「うーんとつまりいいか、一回しか言わないからな。こいつのいう好きは愛だ。それで多分お前のも愛だ。

たしかに無機質な試験管の中でこいつは生まれたかもしれないけどそこにはお互いの愛があるんだ。

なのに、勝手には不幸な生き物を創ってしまったと勘違いした。そこからしてこいつに対して失礼じゃないか。

こいつはこいつで、生まれてきてよかったと思ってるのに。

それなのにが自分のことを創って後悔してるって思ってこいつは傷ついたんだ。わかるか?」

「、、、、なんとなく。」

「なんとなくじゃなくて理解しろよ」

「うーん、難しい。でもこれだけは言えるよ。ちびエド。ぼくは君たちを創って後悔はしてないよ。後悔するなら最初から創らないさ、、、。」

そう言うとは小エドをエドから抱き取った。

「不安になったんだね、、、。ごめんね。不安にさせて。」

そういうとぎゅっと抱きしめた。

、オレ、のこと愛してる!」

小エドもそう言うとのほっぺたに擦り寄ってきた。

「よし、ちびエド、母さんのところに戻してやったぞ。」

にやにやしながらエドは言った。

「誰が母さんだよ、、、?」

は嫌な予感がしてエドに聞いた。

「決まってるじゃん。だよ。」

「何故?」

「んでオレが父親。」

「だから何故?」

しつこくは問う。

「だって気づいてないのか?ちびどもの懐き方はどうみても母親に懐いてるみたいだぞ。

それに何百時間も面倒見るなんてもう母親って感じじゃないか」

しらっとそう言うとエドはのキックから逃げるべく一歩後ろへ下がる。

「だからさ、こいつらには母親も父親もいるんだ。伯父もいて、従兄弟もいて。お前が気にするほどこいつらは寂しくないよ」

そういいながらエドは工房から出て行った。

 

残されてのは小さなエドとと呟きだった。

 

 

 

 

 

 

 

「、、、、、、ありがと、エド、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/11/21脱稿

あとがきという蛇足

は・ず・か・し・い。これは何なんだろうね。とっても恥ずかしい作品だな。

ちなみに私の脳裏には「竜の騎士」っていう本に出てきたホムンクルス・飛び脚がうろついてます。

ちなみに私はぜったいこやつが大好きで大好きで。一度は書きたいネタだったのです。(文が変)

ちなみに「小エルリック同盟」に参加記念の作品です。

というか「小エルリック同盟」と「竜の騎士」の飛び脚がドッキングしてこの作品が出来上がりました。

一応、今は番外編に入れておきます。時期的にはエルリック兄弟がやってきてから一年以上経っています。

これも蛇足ですがタイトルの我らがホムンクルスとはさんのことです。愛を知らない、愛に慣れてない彼に愛を与えましょうという意味で。

 

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