どさっと本を閉める音がした。そして唐突に彼は立ち上がった。
「二人とも、お茶にしよう!」
それはエルリック兄弟が調べ物をしている最中にかけられた言葉だった。
「ん?なんだ、、お茶?」
エドは本から少し頭をあげ、前に座ってレポートを書いていたを見た。
は頭をがしがし掻くとどかどかと図書室から出ていった。
『行き詰まったのか、、、?』
エドはそんなことを考えた。は理解するのは速いが一度、理解できないとなかなか前に進むことができないらしく、すぐ行き詰まってしまうことは一緒に勉強していてわかった。
「兄さん、どうする?」
隣で座って本を読んで勉強していたアルフォンスは兄に問うた。
「ん、まだ切りのいい所まで読んでないんだ、、、」
「そう?じゃぁ、ぼくの手伝いに行ってくるね」
アルフォンスはそういうのが早いか、立ち上がりを追いかけて図書室から出ていった。
図書室にはエドが一人で残された。
「、、、、エド?おーい!エドエド?そんなに集中してて大丈夫か?」
唐突にエドは声をかけられた。
「何の本、読んでんだ?うげ、また難しそうな、、、頭痛くなんねぇ?」
は苦虫を噛んだような顔をして、そういうと彼の前にお茶を出した。
「ほれ、これ飲んでちょっとブレイクしようや。うん」
「ありがと、でも休憩したかったのはお前だろ」
「へへ、ばればれね。いまアルがお菓子持って来てくれるよ。」
ほれほれ、アルが来る前に片付けて片付けて、とに急かされながらエドは机の上にあった本を床に置いた。
机の上がきれいになったところでアルがお皿を持って入ってきた。
「兄さん、全然来ないんだから来ちゃったよ。ねぇ」
「ねーそのお兄様はずぅっと本を読んでおられましたよ」
はけたけたと笑いながらアルに座るようにうながす。
「ではでは、アフタヌーンティーを楽しみましょう!」
「兄さん、ずっと本読んでたってほんと?」
「あぁ。なつかしーな、スコーン」
そういうとエドは熱々のスコーンを二つに割ってジャムを塗りつける。
「そのスコーン、が作ってくれたんだよ」
アルフォンスがお茶を飲みながら言った。
「嘘、がぁ?」
エドがあからさまに顔をしかめる。
「んじゃ誰がそのスコーンを作ったと思うわけ?」
こんな熱々なのを。そういうとは失礼なという顔をしながらスコーンをほおばった。
「いや、アルかと、、、、」
「っくっ、、、、たしかにぼくは器用じゃありませんよ」
あからさまに悔しそうな顔をするがおもしろくて。
「うそうそ、そういうわけじゃ」
肩を動かして笑いながら言うエドをアルが肘でつつく。
「兄さん、失礼だよ!」
だが兄弟は笑い出す。
「なんだよ!そういう訳じゃないって言う割に、その笑いはなんだ!笑いは」
くそう、覚えてろよ。そう捨て台詞を言うとはまた一つスコーンを手にとる。
「ところで、さっき懐かしいって何が?」
は口をもぐもぐさせながらエドに聞いた。
「母さんがよく作ってくれたんだ、おやつとして。」
「ふーん。母さんか。お袋の味って奴?二人の母さんってどんな人?その人も錬金術師?」
「いや、母さんは普通の人だったよ、、、。」
エドの表情が母親の話になって翳ったのをは目ざとく察した。
「、、、、もしかして亡くなってたりする、、、、の?」
二人が答えない。はそれを固定として受け止め
「ごめん、、、」
とつぶやいた。
「でも奇遇だよな、ぼくの母親もいないんだ。実は」
二人は顔を上げた。目の前で遠くを見つめるようながそこにいた。
「の母さんも亡くなったの?」
アルが質問した。
「いや、そうじゃなくて、ぼく、試験管ベイビーって言われるものなんだよ」
寂しそうに、目の前の人が言った。
「試験管ベイビー?」
「アルたちは知らないよね。つまり、卵子を取り出して人工的に精子を受精させるんだ」
卵子と精子ってのは知ってるよね、そう言っては二人を見ながら顔を傾けた。
「それから受精させて代理母に産ませるっていうもの。ぼくの場合は父親の婚約者が死んじゃってその人が生きてる間に残しておいた卵子と父親の精子を受精させて代理母に生ませたものらしいけど。」
そういうと彼は一呼吸おいてお茶を飲み干す。
「だから、母親っていうの、知らないんだよね。」
あはは、と笑う。
「あ、えと、ごめん」
エドは驚いて、謝った。
「いやいや、なんか君たちに嫌な思い出を思い出させちゃったみたいだし、これでアイコってことで」
は「もう一杯どう?」とお茶を勧めた。
「うん、、、、こちらに来てから、いろんな本を読んで知ってはいたけど、、、」
エドが言いよどんだ。
「まさかがそうだとは知らなかった、、、、ごめんなさい」
アルも謝る。
「そんなこと言わないでくれる?さっき言ったじゃんおあいこだって。」
沈黙が続く。
その沈黙を破ったのはだった。
「あ〜もー!こんな雰囲気にしたくて休憩取ったんじゃないよ!明るくいこう!」
それでも気まずそうにしている兄弟を見ては言った。
「ぼくはそんなふうにされるとは思ってなかったのに二人には失望したよ!」
が溜息をつきながら見下すような目を二人に向けそう言うと二人はばっと目をあげた。
「なっどう意味だよ!それ」
エドが噛み付く。
「その意味まんまだよ!バカエド。」
「んだと!」
「おまけにチビ、豆、おたんこなす、錬金術オタク」
「ムキーチビゆうなー!!!」
その言葉にエドは完全に切れた。
「兄さん!!」
アルがエドを羽交い絞めにした。それでも今にもアルの腕を振るい離して飛び出していきそうな猛獣エド。
「お前らとなら、、、、、」
がぼそりと、しかししっかりと。
「お前らとなら笑って話せると思ってたのに!」
は涙目になりながら二人を睨んでいた。
そう言うのが早いかは食器を片付け始めた。そしてスコーンののった皿だけを残し部屋から出て行った。
2003/11/12脱稿
この後はプチ選択性。時間的にはアルが最初に謝って次にエドが謝ります(多分)。同時進行的に主人公主観。
時間どうりにアルからエドと読んでも良し。アルかエド、どちらか選んで読んでも良し。主人公主観を読んでも良し。
また、アルかエドどちらか読んで主人公主観を読むともっといいかもしれない。
さて、どうなるか。
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