「お前らとなら笑って話せると思ったのに!」
そう言うと彼は食器をおもむろに片付けはじめると部屋から出て行った。
エドは驚いてぼーっとしていた。
「!待って!」
弟はそんなを追いかけて部屋を出て行った。
「なんだんだよ、、、、!」
『訳がわかんねぇ!!』
がなんで急に怒り出したか、なんであんな顔をして出て行ったのかエドは判じかねていた。
「、、、、くそっ!」
そういうと彼は目の前にある机に蹴りを入れた。その時、が置いていった冷めたスコーンが一つ皿から落ちた。
エドはじっとそれを見て、一呼吸置くと落ちたスコーンを無造作に口に運んでまた本の続きを読み始めた。
「兄さんいる?」
ごはんにするって、そう弟が呼びに来たのは外が暗くなり始めた頃だった。
「また、こんな暗いところで、がいつも言ってるじゃない、暗くなったらすぐ電気をつけなさいって」
そうアルはいうと図書室の電灯のスイッチをいれた。すると今まで薄暗かった図書室がパッと明るくなった。
エドは眩しそうに目を細めた。どうも自分はこの明るすぎる人口の光を好きになれない。
そう思う反面、この人口の光はを思い出される。いつも暗くなるまで本を読んでいる自分。
その様子を見てはいつも溜息まじりに「こんな暗いところで本読んでると目、悪くなるぞ」と言いつつ人口の光をつける。
でもそんなを見るのがまんざらじゃない自分もいることは事実だった。
エドはそんなことを思い出して顔をしかめた。さっきの出来事を思い出したからだ。
「兄さん、さっきのこと、まだ気にしてるの?」
そんなエドの表情を読み取ったアルがすかさずエドに聞いた。
「気にしちゃいねぇよ、、、」
エドはむっとした顔でアルを睨んだ。そんなことをしてもなんの解決にもならないし、弟の目をごまかせると塵とも思っていないが。自分の弟ながら人のことによく気が付く男だ。
「ふ〜ん、、、」
アルはそんな兄にあまり関心なさそうに机の上や、机の近くに散らばっている本を片付け始めた。
「はやく片付けよう。ウィルさんたちが待ってるから」
食卓へ行くとすでに夕食の用意は整っていた。
「おっ来た来た、師匠、二人が来たよ!ごはんにしましょ!」
さっきのはどこへやら、今までのに戻っていた。
「今日はビーフシチューだぜ!」
むふふーすね肉を昨日から煮込んでおいたのだ!と自慢げに言うはホントいつもので。
さっきまでのエドの心はぽかんと穴が開いたかのようだった。
『オレだけかよ、、、気にしてたの、、、』
気にして、損した。そんな気分だった。
だがまだ胸の奥はモヤモヤとした息苦しさを訴えていた。
「、今日はレポート終わりましたよね?」
「うっ、そ、それはー、えーと」
は明後日の方向を見ながらウィルの質問に窮していた。
そんなの姿を見てウィルは溜息をついた。
「まったく、今日も終わらなかったの?いつになったら錬金術の修行が再開できるの?僕これでも結構忙しいんだよ」
「いやーその、、、ごめんなさい」
はウィルのとげを含む言葉に結構素直に謝った。いつもならなんだかんだ理由をこじつけようとするのに。
「ウィルさん、そんなをいじめないで」
「ありがとう、、、アル、、、」
は感動したのか目に涙を浮かべながらアルを見た。
「たしかには昨日は遊んでたけど今日は結構しっかりやってたよ!」
しかしアルは一つ縄ではいかなかった。
「アル!一言多いよ!」
「ほーう、、、昨日は遊んでたんだー、いい気なもんだねぇ、、、明日絶対午後、空けなさい。」
「アルのばかー」と言いながらは涙目でアルを見ていた。
「アル君、貴重な情報ありがとう。やはり持つべきはいい目と正直な監視役ですね」
「いえいえ、いつもお世話になってますし」
あぁどす黒い笑顔のツーショットが出来上がってる、、、。
少しがかわいそうだった。
夕食が終わるとはアルを手伝って食器を台所まで運んでいった。今日はアルが片付け当番の日らしい。
運び終わってからはおもむろに切り出した。
「よしっと、師匠、今日は家に帰ります。ぼく」
「そう?」
「は?」
エドは耳を疑った。レポートが終わらない限りはここに泊まり続けるのが常だった。
それが今日は帰るというのだ。
「珍しいね、レポート終わってないのに。」
「いえ、家にある資料がちょっと必要で」
はあたり触りのない答えを返した。
「つーか逃げる気じゃないよね。あっそれともお家が恋しくなっちゃったかな?」
そういうとウィルはの頭を撫でるような仕草をした。
「んな訳あるか」
「んじゃ、明日、大学に行ってレポート出してから来ますんでよろしくお願いします。」
はそういうとよいしょっと荷物を持ち上げた。
「うん、待ってるからね。つーか来なかったら大学まで迎えに行ってあげるよ」
「ありがたくお断りさせてください」
はウィルとそんな会話をするとさよならというとドアから出て行った。
エドにはなんだかそれが無性に嫌だった。結局エドはあのけんかの後一度もと言葉を交わさなかった。
交わせなかった。話かけようとするとうまい具合にかわされてしまったのではないかと思われる。
そして最後に今日は帰るだ。
「、、、、くそうガキ臭いことしやがって!」
そう一言愚痴ったかと思うとエドは「を送ってくる!」と一言大きな声をあげると玄関から飛び出した。
「星がきれーだなー」
エドはにすぐに追いついた。それはが星を眺めていたせいだ。
荷物を置いてその上に座っているを見つけたときエドは安心した。
自分が知っている道以外の道を歩かれていたらわからなかっただろう。
「そうだな」
ぼそりとエドが言うとは弾かれたように後ろを振り返った。
「な、何しに来たのさ?」
「を送っていこうと思って」
はそれを聞くと驚いたように目を見開いた。
「「、、、、、、、、」」
二人はその後会話に詰まってしまった。
「その、ごめんね」
最初に沈黙を切ったのはだった。
「うーん、その急に怒りだしちゃって」
は空を見上げながら言った。
「、、、、、、」
エドは言葉を返さない。それを不信に思ったのか、は「エド?」と声をかけ、エドの方を見、顔を傾けた。
「、お前、何に怒ってたんだよ」
「へ?」
は素っ頓狂な声をあげた。
「だから何であんなに怒ったのかオレは知りたいの!勝手に自己完結させるな!」
エドは顔に血が上ってくるのを感じた。うやむやにすることもできた。けどとはそんな関係で終わりたくなかった。
ここで逃げたらきっとと自分の間には溝ができる。埋められない溝が。それが無性に嫌だった。
エドは必死だった。
「え、あ、うー」
は言葉らしい言葉を発していなかった。とても言い難そうに視線を漂わせている。
「言わなきゃ、、、、」
だめ?と視線で訴えかけてくる。
「、、、オレはアルのように気が付くほうじゃないんだ!オレは言ってもらわなきゃわからない!」
エドは半ば怒鳴った。その声にはびくっと肩を揺らした。
エドはそんなを見て『いけない、やりすぎた!』と思った。自分はいつもことをやりすぎてしまう。
きっと今は怯えているんじゃないか、エドはそう思って焦った。
『話を聞きたいだけなのに怯えさせる奴がどこにいるっていうんだよ!』
心の中で自分を責める。
「、、、、その、エドたちなら、、、、」
だがそんなエドの心配をよそに彼はポツリ、ポツリと話し始めた。
「エドたちなら、さっきのことを言っても態度、変えないで付き合ってくれるんじゃないかな、、、と」
「へ?」
「だから!エドたちならぼくのことかわいそうだとか、変な奴とかそんな感じの目で見ないでくれると思ったんだよ!」
はエドに真っ赤になりながら言った。
「ぼくは同情とかそういう類のものはいらないんだ。ただ同じ場所からものを見ることができる、、、」
はそう言うと口を閉ざした。最後の方がなんか涙声だった。
エドはポカンと口を開けていたがそのあとにんまりと笑った。
『なんだ、、、そういうことか。、、、嫌われたわけじゃないのか』
エドはそう思った。
そしておもむろに座っているの右側に立ってしゃがむと左腕をの肩にまわした。
はそのエドの行動に驚いたようでエドの顔をまじまじと見つめてきた。
「な〜んだ!そんなことだったのか!」
「な、そんなことって!」
はむっとした顔でエドを睨んだ。
「オレはそんなこと考えてなかったぜ。」
「は、、、?」
「たしかに最初は驚いたけどな。」
エドはの首を自分の首に近づけて
「それだけのことだよ」
「お前が勝手に勘違いしただけじゃないか!」
エドはそういうとにししと笑いながら座っていたの腕を引っ張り立たせた。
「オレはがかわいそうだとか同情に値するとかそんなこと一切考えなかったぜ。そんなことよりが今ここにいることの方が重要だと思うね。どんな方法で生まれたにせよ」
「だってさ、今ここにがいなかったら少なくともオレは寂しいと思うぜ」
エドの話を聞いていたはどんどん瞳をうるうるさせていた。
「う、、、うわーん!」
「へっな、何だ!ちょっと、?どうした?!」
「エドのばかー」
「なぬ?!」
「うわーん!大好きだー」
そう言うとはエドに抱きついた。さて困ったのはエド。
この状態はまずい。とてもまずい。周りは夜が更けている。まだ街中というわけではないがちょっと先には家だってある。
正直近所迷惑だ。
「!泣くな!今何時だと」
「大好きー」
「泣くなー!オレが泣きたいよ!」
うわーん、、、町に子どもの泣き声が反響した。
2003/11/13脱稿
どうなんでしょうね、、、、これって。アルのと全然違うじゃないか。あーもう私はエドが大好きなのよ。
信じて。くそう。いつかリベンジしなくては、、、!
ほんとはエドとお手てつないでお家へ帰ろう、というのだったのに。ほんとは禁忌の話を持ってくるはずだったのに。
しかも夕食シーンでアルが出張ってるし、、、あぁこれはもしやアル夢決定なのか?決定なの?
主人公さんが幼児返りした模様で。
この主人公は子ども扱いされると嫌がるのに皆、子ども扱いしたくなると言う属性の人です。
エド、ごめんね、、、。君はお兄ちゃんだ。お兄ちゃんなんだ。弟がもう一人できたと思って耐・え・て・く・れ(死)
ちなみに今日、主人公と出生の似ている人の認知判決がでたそうな。なんかこの作品のことがありびっくりしてたり。
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