クリスマスツリー

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、エドくんにアルくん!いいところで会った。」

「なんですか?ウィルさん」

アルが答え、二人はに疑問を問い掛けた。

「もうすぐクリスマスなんだ。その飾り付けを手伝ってくれない?」

「「クリスマス??」」

は楽しそうに言った。だがそのの言葉の中に二人の馴染みのない単語が含まれていた。

「クリスマスを知らない?」

はそう言うとあちゃーと顔に手をあてた。

「そっか、知らないのかー。」

はどうしようと考えた。そして顔をぱあっと明るくした。どうやら名案が浮かんだみたいだ。

「二人とも、にクリスマスって何か聞いてみな。そうしたらきっと教えてくれるから。

それからにクリスマスの飾り付けをするように言ってくれるかな?できればその後にの手伝いをしてやって欲しいんだが」

エルリック兄弟はお互いの顔を見合わせた。そしてまたの顔を見る。

の顔はとても楽しそうな表情だ。しかし今回は単純に楽しい事らしく、いつもの腹黒さが微塵とも感じられない。

二人はこちらの世界に来てからこの人物に世話になっているだが、ここ数ヶ月でこの人物の悪い癖を理解した。

その悪い癖によって被られた事件はすでに自分たちの身にも降りかかってきている。

今回もその悪い癖が始まったのかと二人はいぶかしんだのだ。

しかし先ほども述べたようにの表情には悪い癖が出るとき特有の腹黒さが感じられなかった。

そのため二人はこう答えた。

「「いいですよ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスマスって言うのはお祭りだよ。ようは。」

は本をめくりながら二人の問いに答えた。

「お祭り?」

「そう、お祭り。キリスト教っていう一神教は知ってるよね?エド」

はこの前、エドがこの世界の宗教に関する本を読んでいたのを知っていた。

エドはたちの錬金術では宗教の教本として暗号化している例があると知って学んでいたのだ。

「あぁ。この前読んだ本に書いてあったな。たしか四大宗教の一つだっけ?」

「そうそう。その宗教のお祭り。キリスト教の創始者の聖誕祭。でも実はキリスト教発生以前の古代宗教の冬至のお祭り。」

は一気にそこまで言うと一息ついて本の行間を目で追う。

「、、、、それだけ?」

アルが呆気なく終わってしまったの説明に声を発した。

「そう、それだけ。」

は未だ本から目を離さない。

「、、、、、、、、ちょっといいか?」

エドがいかにも不機嫌そうに聞く。

「、、、ぼくは忙しいでーす。」

この言葉にエルリック兄弟は何かを察した。はこれから自分たちが言おうとしていることを知っている。または予想している。

「でも、それじゃ僕たちも困るよ」

アルがを揺さぶる。

「、、、、、、、しょうがないなぁ、、、それで、はなんだって?」

「クリスマスの飾り付けをしろと」

エドが簡潔に言った。それを聞いた途端は手で頭を押さえた。

「まーたーかー、、、、、」

そう言うとは大儀そうに溜息をつく。

「そんなに大変なことなのか?」

エドがそのいかにも嫌そうなの返答を見て眉間にしわを寄せながら聞く。

もしかしたらすごく大変なことを任されたのかもしれないと。

「いや、そうじゃないんだけどね。まぁ大変と言えば大変かな、、、」

はとうとう本をたたんだ。そしてすたすたと歩き出す。

その後ろをエドとアルも続く。後ろからついてくる気配を感じては振り返る。

「なに?二人とも??」

は首を傾げながら二人に問うた。

「オレたちも手伝うようにって言われたんだ」

そう聞いた途端は生気を取り戻した。

「ほんと?やったー!!今年は一人で飾り付けしなくて済む!!!」

両手を勢いよく天に向かって振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、モミの木を採りに行こう。それから家の飾りつけ。」

二人にそう説明しながらは倉庫から斧を取り出す。

「アル、これ持ってて。エドはこの綱ね。ぼくはこのソリ持ってくから」

「わざわざ、木を切りに行くのか?」

エドは驚いたように聞いた。

「そうだよ。これが結構大変なんだよね。一人でやってると気が滅入る、滅入る。」

あはははーと笑いながらの屋敷の裏手にある林に向かう。

「ちなみに結構歩くからね。モミの木は裏山の山腹にあるんだ。」

なんでもないかのようには言ったが。

「げっ裏山の?」

「ほんとに?」

エドとアルは驚いた。今まで二人は裏山の存在は知っていたが中に入ったことはなかった。

「二人とも初めてだっけ?じゃぁ遭難したくなきゃちゃんとぼくについてきてね」

既に二人は後悔しはじめていた。こりゃぁかなりの重労働を手伝わされるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなカンジでいいの?」

「そうそう。んで最後に一番上にこの星をつけて。」

はそう言うとアルに手渡した。しかしそれはアルでも手が届かない。

アルがそこで困ったような顔をに向ける。も困る。

そこへエドが提案した。

「誰かが肩車すればいいんじゃないか?」

「誰が?もちろん僕は肩車するほうだろうけど。」

アルが当然のように聞く。たしかにこの三人のなかで一番大きいのは君だけど、、、。

その言葉にとエドはお互いを見つめた。それはそれは長い間。無言の闘争だ。

「ここはやっぱり年の若い人が、、、」

「いやいや、オレオートメイルが重いし。何よりの方が少し小さい」

エドはにこやかにの言葉を遮る。

「、、、、実はぼくは全身筋肉質で、、、」

「その割にはすぐにオレにのされちまうくせに。」

「なにおう」

目線だけで火花を飛ばしている。

「まあまあ、兄さん、も。ちなみに僕としてはの方がいいな。」

にっこりとここで爆弾が投下したアル。

エドは後ろで天使と一緒に踊っている。は目が点になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、クリスマスツリーの飾りつけは済んだ。あとは玄関にリースをつけて。」

は指折り数えて遣り残しがないか確認する。

「後は当日の夕食の用意だけかな?でもこれはいつもがやるからよし。」

確認し終わっては二人に振り返った。

「ありがとう。これで全部だよ。」

「いや、結構楽しかったよ。裏山に行くって聞いたときには何をやらされるのかびくびくしてたけど」

アルがにこにこして言った。

「オレも。あんな立派な斧、持ち出してくるんだぜ?どんな大木を切るのかとひやひやした。」

エドも肩を大げさに上下させて言った。

「でも去年は一人であの木を用意したんだよ?いくら若くて細い木だって言っても一人じゃ大変だったよ。」

は去年のことを思い出しているのだろう、苦労を顔に滲ませた。

「でも今年は一人じゃなかったから楽しかった。やっぱりこういうのはみんなでやった方が楽しいね。」

そう言うと満面の笑みをは浮かべた。

「ああ、オレも楽しかった。」

エドもの笑顔につられて笑う。

アルもそんな幸せそうな雰囲気を感じて笑顔になった。

いつのまにかみんな笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/12/24脱稿

 

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